【ワシントン時事】米軍が過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆を開始してから8日で丸3年を迎えた。ISは一時、シリアとイラクで北海道と四国を合わせた面積に相当する領土を制圧し、約800万人を支配下に置いた。だが、米軍を主力とする有志連合の攻撃で、勢力は大きく後退。500万人がIS支配から解放された半面、市街地での激しい戦闘で多くの人々が犠牲になった。
 2014年8月8日、ペルシャ湾に展開した米空母から発艦したFA18戦闘攻撃機2機が、イラク北部アルビル近郊でIS部隊にレーザー誘導爆弾を撃ち込んだ。米軍によるIS掃討作戦の始まりだった。
 「ISは潤沢な資金を背景に、瞬く間に世界で最も危険なテロ組織に成長した」と米国防総省のデービス報道部長は語る。最高指導者バグダディ容疑者は広大な領土を支配し、「国家」樹立を宣言。従わない市民を虐殺するなど「恐怖政治」を敷いた。
 作戦開始から3年の間に、73の国・地域・機関が参加する有志連合は、ISがイラク最大の拠点としていた北部モスルを奪還。ISが「首都」と位置付けるシリア北部ラッカでも市街地の半分近くを制圧した。
 米国防総省によると、イラクではIS支配地域の7割、シリアでは5割を解放した。デービス報道部長は「有志連合は前進を続けており、ISの敗北は必然だ」と強調する。
 その一方、多くの市民が犠牲になった。有志連合は、掃討作戦が始まってから市民624人が戦闘に巻き込まれるなどして死亡したと発表した。だが、在英ジャーナリストらでつくる監視団体「エアウォーズ」は、昨年12月末までの2年4カ月間で、有志連合の空爆に巻き込まれるなどして死亡した民間人は約2300人に上ると指摘する。
 ラッカをめぐる攻防が大詰めを迎えれば、市民を「人間の盾」とするISの激しい抵抗が予想される。また、ISは「アフガニスタンやマリ、フィリピンでも勢力を伸ばしており、いまだに大きな脅威であることに変わりはない」(同報道部長)。掃討作戦が4年目に突入した今も、戦いに終わりは見えてこない。


https://www.jiji.com/jc/article?k=2017080800709&;g=isk
(2017/08/08-14:29)