8月3日に仏メディアが伝えた世論調査では、マクロン氏の支持率は36%。7月と比較し7ポイントの減少で、不支持は49%と50%直前に達しています。
意外でしょうが、マクロン大統領の支持率は、就任から同時期の比較において、人気低迷に悩まされたオランド前大統領をも下回っています。

マクロン大統領の「前進」は、6月18日の国民議会選挙で、議席数577の内、350を獲得。過半数を得ました。
ところが、国民議会選挙後、閣僚の辞任が相次ぎ、さらに7月19日にはフランス軍制服組のトップである、ドビリエ統合参謀総長までもが辞任。ドビリエ統合参謀総長は、フランス政府の「緊縮財政」に抗議し、
「現在の環境下では、フランスやフランス国民の保護に必要な防衛力をもはや保証できない」と、表明。
国防予算のみならず、マクロン政権は財政赤字対GDP比を3%以内に収めるべく、約45億ユーロ(約5900億円)の歳出削減を宣言。公共事業、住宅補助など、各種の削減に乗り出し、影響を受けるフランス国民の怒りを買っています。 

なぜ、フランス政府が緊縮財政路線を採っているのかといえば、グローバリズムの国際協定たるEU(欧州連合)の規定で、財政赤字は対GDP比3%に収めることになっているためです。
また、マクロン政権がフランスの「労働規制の緩和」に乗り出そうとしていることもまた、労働者階級の顰蹙を買っています。
フランスの失業率は相変わらず10%前後で高止まりしています。その理由について、巷の「エコノミスト」たちは例により「労働規制」が強固であることを上げているのです。
16年時点の雇用者に占めるパートタイム労働者の割合(パートタイム比率)は、ドイツが26.7%、イギリスが25.2%に対し、フランスは18.2%。
法定最低賃金は、ドイツが8.84ユーロ、イギリスが8.6ユーロ程度であるのに対し、フランスは9.76ユーロ。
確かに、フランスの労働規制は英独両国よりも強固です。とはいえ、それはフランスの労働者が英独に比べて「守られている」という意味でもあるわけです。

もちろん、高失業率は問題ですが、フランスのインフレ率は17年7月のデータで対前年比+0.8%と、1%を割り込んでいます。さらに、国債金利(長期金利)は0.738%と、日独両国同様に1%未満です。
すなわち、政府が国債を発行し、需要を創出すれば、高失業率の解消は可能なのです。ところが、やらない。
いや、できない。
フランスがEUやユーロに加盟している限り、「低インフレ率、低国債金利」という資源(リソース)を国民経済に投じることはできません。EUは財政赤字の拡大を禁じており、ユーロは中央銀行による国債買取を不可能にします。
政府が金融・財政政策による需要創出に「国際協定」により踏み出せない以上、高失業率の改善のためには、
「労働規制を緩和し、労働者の処遇を落とし、国際的な価格競争力を回復する」以外には存在しないという話になってしまいます。

逆に言えば、フランスで「企業の利益」を拡大する労働規制緩和を推進するためには、高失業率と緊縮財政が「必須」という話になってしまうのです。
EUが緊縮財政を強要するからこそ、フランスでは大手企業やグローバル投資家が望む労働規制緩和が正当性を帯びる。
フランスの労働規制緩和という構造改革を推進するためには、緊縮財政が不可欠という話です。

フランスの事例からも、グローバリズムは規制緩和、自由貿易、そして緊縮財政が「トリニティ(三位一体)」となっていることが理解できます。
もっとも、グローバリズムのトリニティを推進すると、国民の支持を失い、支持率が下がります。だからこそ、グローバリズムを推進する政治家の多くが「保守政治家」を装い、
「国家、国民のために尽くします! 我が国を外国から守ります!」
と、ナショナリズム「もどき」を叫びつつ、国民の支持をつなぎ留めつつ、グローバリズムにより国民の生活や豊かさを破壊しようとするのです。

現在の日本とフランスの政治状況は、気味が悪いほどに似ています。

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