人口が少ない自治体で、議員のなり手が不足する問題が生じている。高知県大川村では、議会を廃止し、住民が村政に直接議会に参加する「村民総会」の設置を一時、検討する事態に。長野県喬木村議会は、夜間と休日に審議日程を移す方針を固め、なり手の確保を進める。国も今年度、町村議会の在り方について研究会を設置。議会活動と仕事を兼業しやすくするなど、なり手確保に向け、地方自治法などの改正も視野に入れた検討に乗り出した。

 議員のなり手不足の背景には、人口減少や地方政治への住民の関心の薄さ、議員報酬の少なさ、行政に関係が強い仕事と兼業できないとする法の制約などがある。

 町村議員の報酬は自治体規模が小さくなれば少額になる。総務省の統計によると、町村議会議員の職業別比率は農林業が30.9%で最も多く、議員専業(21.6%)、建設業(6.6%)などが続く。

 同省によると、人口が少ない自治体は議員定数が少なく、比例する形で立候補者数も少ない傾向がある。特に、人口1万人未満の自治体でなり手不足が起こる可能性があるとみる。該当する自治体は全体(927自治体)の半分以上に当たる502に及ぶ。

 議員の確保など地方政治の課題解消に向け、同省は7月から有識者で構成する研究会を設置し、町村総会の在り方などの検討を始めた。あいまいな地域公社の社員の扱いの明文化や一定の線引きなど、法改正も視野に検討する。初会合では委員から「夜間や休日の議会開催を検討すべき」「住民が一堂に会する総会は実現が難しい」といった意見が出たという。

背景に職種の偏り 高知県大川村

 町村総会の設置を検討していた高知県大川村の議会運営委員会は7月、聞き取り調査や有権者361人(回答227人)へのアンケートから「議会の存続は可能」と結論付けた。「立候補の可能性はない」と180人が答えたが、「ぜひ立候補したい」が4人、「課題が解決すれば立候補も検討したい」が20人おり、「議員として活躍を期待できる人材は育っており、議会組織は今後も構成できる」と判断した。

 なり手不足の要因は「政治への無関心」(和田知士村長)、「自営業者が少ない」(朝倉慧村議会議長)などが上がる。村在住の男性農家も「地方での就職先といえば役場などの公的機関が多く、議員のなり手が少ない」と指摘する。

 同村では41人の農業従事者のうち、ふるさと公社勤務や任期付公務員の地域おこし協力隊員として活動している人が多く、議員との兼業禁止に抵触する恐れもある。総務省は「大川村に限らず、公務員やそれに近い立場の人が多い自治体で議員の担い手不足になりやすい」と解説する。

夜や休日も審議へ 長野県喬木村

 長野県の喬木村議会は7日、一般質問などの大半の審議日程を平日の夜や休日に移す方針を固めた。6月の改選で会社勤めの議員が誕生し、仕事と議員活動の両立を図った形だ。村議会事務局は、村職員との調整を経て12月定例議会での実現を目指す。鞍馬淳事務局長は「将来は母親なども出馬してくれることが理想」と効果を期待する。

 野田聖子総務相は日本農業新聞などの取材に対し、なり手不足の地方議会について「国会と同じようなやり方が、本当にいいのか。仕事のない日曜日や夜に議会を開くなど、いろいろなやり方が考えられるのではないか」と、議会を維持するための運営方法に検討の余地があると指摘。調査を進めながら、地方議会の在り方を検討、改革していく意向を示した。 (川崎学)

配信2017年08月17日
日本農業新聞
https://www.agrinews.co.jp/p41637.html