>>1 続き

日産「シーマ」(初代)のVG30DETエンジン(画像:日産自動車)
https://contents.trafficnews.jp/image/000/011/493/170813_cima_05.jpg

更に、日本初となるV型6気筒ツインカムターボエンジンの搭載も、市場に強いインパクトを与えました。このVG30DET(V型6気筒2960cc DOHCターボ)エンジンは、当時の日産における最高出力255ps/6000rpmを記録。直線での加速は、それまでとは異次元の感覚でした。外から見た姿勢は、まるで軽くウイリーするかのように後輪がぐっと下がって見えるほどで、室内でも分厚いシートに押し付けられるように沈み込むと、「ああ、高級車に乗ってる!」と陶酔したものです。

■「シーマ現象」からの2代目は…?

かっこよくて走れる大人の高級車「シーマ」は、若者から中高年まで、幅広い層の男性に支持され、一大ブームとなりました。知名度が高く、クルマに詳しくない女性でも、その車名にはハートの瞳で反応していました。

日産「シーマ」(初代)のインパネまわり(画像:日産自動車)。
https://contents.trafficnews.jp/image/000/011/494/170813_cima_06.jpg

この後、「シーマ」は、1991(平成3)年に2代目へモデルチェンジします。すると今度はV8エンジンを搭載。走行性アップとともに、ロングホイールベース化で、より大型高級車のイメージを強めていきます。

すると「シーマ」は、活躍の場を変えていきます。大きくてスタイリッシュなボディは「威圧感満点!」という印象になり、上質で快適なインテリアは「土足禁止」(車内を汚さないために、クルマの中では靴を脱ぐ)という文化を広く定着させたように思います。徐々にイメージが変わり、私(下高井戸ユキ:ライター)の周囲では、「何、乗ってるの?」「え、『シーマ』」に対する返事は、「おお!」(憧憬)から、「お、おお……」(畏怖)に変化していきました。

現在「シーマ」は日産の海外向け高級ブランド、「インフィニティ」のグリルを持つ、高級ハイブリッドモデルの国内用モデル名として使用されています。一時代を作ったものの、モデルそのものへの憧れと、周囲の車名に対するイメージが世代ごとに一致しない、ちょっと切ない1台、「シーマ(FY31)」。それでもやっぱり、街中で後輪が下がり気味の走行シーンを見かけると「おお!」っと声が出てしまうのです。