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 振り込め詐欺などの犯罪に口座を悪用された人が、被害に遭っていない別の金融機関の口座まで凍結され、日常生活などに支障を来すケースが相次いでいる。犯罪と無関係の口座を一時凍結するのは平成20年に施行された「振り込め詐欺救済法」に基づく措置で、対象になるとほかの金融機関も含めて新たな口座をつくるのが困難になる。被害者支援団体には「口座がないため就職できない」との相談もあるといい、団体側は今年7月、全国銀行協会(全銀協)などに対し、凍結解除に応じるなどの対策を取るよう申し入れた。

 「取引で使っている口座が突然止められた。警察に言ってもらちがあかない」

 盛岡市の男性会社員(44)は約10年前に車上荒らしに遭い、キャッシュカードを盗まれた。カードの口座が「犯罪に悪用された」として、同じ名義で別に開設していた取引口座も利用できなくなった。凍結対象として金融機関に通知したという関西の警察署に相談したが、解除に応じてもらえないままだ。

 弁護士や司法書士でつくる「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会」には近年、口座凍結に関する相談が相次いでいる。昨年10月に凍結の運用改善を求める申し入れ書を全銀協、警察庁、金融庁に提出したが、その後も全国から50件以上の相談が集まったため、今年7月に対策を取るよう改めて申し入れた。

 振り込め詐欺救済法は犯罪に利用された口座を早期に凍結し、預貯金を事件の被害者に返還する目的で整備された。警察当局は犯罪に使われた口座の名義人をリスト化して金融機関に通知。金融機関が口座を凍結し、預金保険機構がホームページに口座情報を掲載する。リスト掲載者が新たに口座を開設しようとしても金融機関は拒否できる、という仕組みだ。

 一方、同会への相談の中には、カードの盗難や紛失で犯罪組織に口座が渡ったことから、「組織の口座」と見なされてしまった例もある。また、対象者が過去にヤミ金を利用した際、業者に脅されたり、「利息をまける」と持ちかけられたりして、通帳などを渡していたケースがあった。同会には、「凍結リスト」に掲載されたことで日常生活に使う口座も含めて止められたため「年金が入ってこない」「給料が引き出せない」といった声が寄せられている。給与振込口座がつくれず、就職できないという相談もあった。

 利用者は金融機関に異議申し立てをすることができる。ただ、凍結口座を指定した警察署に出向き、凍結口座以外の複数口座の履歴を示すなどしながら、犯罪とは無関係であることを証明しなければならないため、同会代表幹事の植田勝博弁護士は「労力も費用も法律的な知識も必要で、凍結解除は一般の人にとってハードルの高すぎる手続き」と指摘する。

 凍結解除の基準は「各金融機関に任せている」(全銀協)といい、預金保険機構によると、いったん凍結された後に解除された口座は平成24〜28年度で350件。植田弁護士は「被害救済に効果がある法律だが、迅速に口座を止められることが裏目にも出ている。凍結解除の要件を整える必要がある」と訴えている。

配信8/21(月) 15:10配信
産経新聞
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