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[東京 25日 ロイター] - 政府は25日、菅義偉官房長官や茂木敏充経済再生相らが相次いで現時点での補正予算編成は必要ないとの見解を示した。2日前に自民・公明両党の幹事長が、補正予算編成の必要性を議論することで一致したばかり。永田町では、政府・与党の意思決定の過程をめぐり、さまざまな「波紋」が広がった。

25日の閣議後会見で、菅長官は「政府として検討している状況や事実はない」と指摘。茂木再生相も、4─6月の国内総生産(GDP、1次速報)が年率換算でプラス4.0%の高成長を記録し「現在の経済状況では(9月下旬召集予定の)臨時国会での補正の必要はない」と述べた。

連立与党幹部が言及した早期の補正予算編成の必要性について、政府が「早期」に否定した背景には何があるのか──。

複数の与党関係者によると、理由は2つありそうだ。1つは準備不足。九州などの水害被害への対応は、予備費で対応可能な範囲にとどまりそうで、目玉政策がない。

従来は公共工事の積み増しで「形がついた」(与党関係者)が、人手不足で予算を付けても消化できないという。

また、人づくり革命での支出は、来年度の本予算で要求する項目が多く、補正予算に盛り込める政策だけでは、小規模な支出にとどまるという。

2つ目は、「大義名分」が立たないことに対する与党内の反発だ。4%成長でどうして追加の財政支出が必要なのか、国民に説明できないという声が、予想以上に多かったようだ。

平沢勝栄(東京17区)、竹本直一(大阪15区)両衆院議員ら30人が、都議選大敗を受け設立した議連「日本の明日を創る会」は25日に会合を開き、その席で後藤田正純衆院議員(徳島3区)が「財政・金融をさらに拡大して補正予算を打ち出しても、出口をどうする」などと指摘。同議連などから安倍政権の財政・金融拡張路線に批判的な声が浮上している。

当初は「災害対策や防衛を軸に補正を打ち出せば、対北朝鮮防衛で最善を尽くしているとアピールできる」(与党関係者)との声が、広がる気配をみせていた。

だが、連立与党の幹事長会談後、公明党の山口那津男代表が早期の補正予算編成に難色を示す発言をしたこともあり、急速に慎重な見方が台頭したようだ。

もともと早期の補正予算編成観測の背景には、「解散風」を吹かして、求心力を維持したい政府・与党の思惑があったとみられている。与党関係者のひとりは「与党内の引き締めを図るため、解散風を吹かせ続けるのにも必要だった」と述べている。さらに10月22日投開票の衆院青森4区、新潟5区、愛媛3区の補選を意識した動きとの見方もあった。

とは言え、この数日の動きは、政府・与党の連携が円滑なのかという疑問符を付ける結果になった。

仕切り直しになった補正予算編成を受け、安倍政権は目玉になる経済政策のメニュー表をあらためて作ることになりそうだ。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

2017年 8月 25日 4:57 PM JST