あなたは「ウィリアムズ症候群」という病気を耳にしたことはあるだろうか?
この病気を一言で表せば「自閉症の正反対」で、人間を「友好的過ぎる」状態にするという。

■「あまりにも友好的な」症候群

別名をウィリアムズ・ボイレン症候群ともいうウィリアムズ症候群は、約27の遺伝子を含む7番染色体がわずかながら欠けていることによって起こると考えられている。
1961年にアメリカの医師J.C.P.ウィリアムズにより報告され、約10万人に1人(最近の研究では約2万人に1人が発症するという説も)の割合で発症する。「妖精のような顔」と称される上向きの鼻、広い額、小さな顎、大きな耳などの特徴を示す場合が多い。

そして患者は、かなりの割合で心疾患と軽度から中等度の知的障害も抱えているというが、しかしその一方では優れた音楽の才能を持ち、出会う人すべてに愛情を示す。
興味深いことに、シェイクスピア時代の道化師の多くは、ウィリアムズ症候群だった可能性があるともいわれている。

しかし、ウィリアムズ症候群の人々はあまりにも愛すべき性格を備えているがゆえに、社会では難しい局面に遭遇してしまう。
彼らは見知らぬ人を抱きしめたり、他人に唐突な褒め言葉や熱のこもった愛情を示すことがあり、それに不快感を示す他人も多いからだ。
また、一人で行動すると見知らぬ人にお金や携帯電話を貸してしまうこともあるという。

■人懐こい犬とウィリアムズ症候群の人々のDNAには類似がある

近年、科学者たちは犬の遺伝子とウィリアムズ症候群の遺伝子構造との間に不思議な関連性があることを発見した。
2010年、進化生物学者のブリジット・フォンホルトと彼女の同僚は、狼と犬の異なる進化的特性を探すため、225頭の狼と85種912頭の犬のDNAを検査した。
そして同研究で、犬とウィリアムズ症候群の人々のDNAに、ある類似性が見られることが判明したのだ。

研究者たちが注目したのは、WBSCR17と呼ばれる遺伝子だった。
犬の場合、この遺伝子またはその付近に存在する遺伝子は、進化の過程において狼よりも人懐こくなるために重要な役割を果たしていることが判明した。より人懐こい犬種には、WBSCR17遺伝子の発生率が高かったのだ。
そして、ウィリアムズ症候群の患者の場合、彼らに欠けている遺伝子配列の近くに、このWBSCR17遺伝子が位置しているという。

以前より、ウィリアムズ症候群の子どもを持つ親から「他者との間に壁を作らないわが子は、まさに犬を思わせる」などの声が上がっていたというが、遺伝子レベルでの解析によって、この奇病の原因が少しずつ判明してきているというわけだ。
まだまだ研究は途上だが、科学者たちはさらに謎に迫りたいと考えているようだ。

■高度な遺伝的進化か

さて、人間に最も近い霊長類動物の1種であるボノボは、交尾をコミュニケーションの道具として使い、彼らの社会構造を平和に維持していることで知られている。
そして我々人類は、社会的利他主義を学ぶことによって、自らの狂暴な性質によって招きかねない種の破滅から逃れてきたという神経生物学の研究結果もある。

ウィリアムズ症候群の子どもは他人への共感性が高く、警戒心を持たず、また人種的偏見もない。
一般的には幼児でさえ、自分と同じ人種を好む傾向があることを示す研究結果もあるが、「人種によって人を測る」神経回路がウィリアムズ症候群の子どもたちにはないらしい。
以上を踏まえると、実はウィリアムズ症候群の人々が持つ遺伝子構造は、より高度な遺伝的進化の結果であり、彼らこそもう一段階“成長した”人類の姿、すなわち人類を救う「ニュータイプ」であると考えることができるのかもしれない。

http://tocana.jp/2017/08/post_14267_entry.html