東芝は31日、半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐって取締役会を開いた。協業先の米ウエスタンデジタル(WD)などでつくる「新日米連合」との交渉継続を確認したが、契約締結は9月以降に見送った。東芝社内にWDへの強い警戒感があるためだ。再建を支える取引銀行が求めた8月中の締結を守れず、上場維持も危うくなりつつある。

「交渉先を特定の陣営に絞り込んだことはなく、3陣営との交渉を継続しています」。東芝はこの日の取締役会後、こんなコメントを発表した。新日米連合に加え、米投資ファンドのベインキャピタルなどの「日米韓連合」や、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業側とも協議を続けるとわざわざ記した。

取締役会までにWD側と契約締結のめどをつけるはずだった。今週に入り、米国からWDのスティーブ・ミリガンCEO(最高経営責任者)が来日。東芝の綱川智社長と会談し、最終的な協議を続けてきた。

だが、東芝社内では、裁判所に東芝メモリの売却差し止めを申し立てるなど強硬策を振りかざすWDに警戒感が強い。銀行や経済産業省に迫られ、WD連合との大筋合意を余儀なくされたのが実態だった。

東芝幹部は「将来、WDの発言権が強まれば、社員は大量に辞める」と心配する。東芝メモリは、営業利益の9割を稼ぎ出す。原発事業の巨額損失の穴埋めで切り売りされることに、半導体事業に近い社員ほど不満を募らせている。

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配信2017年9月1日07時52分
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