民進、分裂か再生か=無効票「8」の衝撃−前原氏、多難な船出
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017090101223&;g=cyr

 1日の民進党代表選で前原誠司元外相が新代表に選出された。前原氏は党再生へ全力を挙げる意向だが、離党者が止まらない現状は、蓮舫氏を代表に選んだ1年前よりも深刻だ。同日の投票では国会議員8人が無効票を投じ、「離党予備軍」との見方が広がった。民進党は分裂するのか再生に向かうのか、土俵際からの再出発となる。
 ◇冷めた空気
 「開票結果をうかがって、非常に難しい船出だという思いだ」。前原氏は代表選出後にあいさつすると、厳しい表情でこう口にした。念頭には無効票が8票も出たことがあった。
 代表選は旧民主政権の中枢を担った前原氏と枝野幸男元官房長官の一騎打ちとなったが、党内では当初から、「いつもと同じ顔触れ」(若手)との冷めた声も上がっていた。蓮舫執行部の幹部だった一人は「どちらが代表になっても支持率は上がらない」と突き放す。
 「無効票8」は、そんな盛り上がりに欠ける代表選を象徴する出来事だった。党関係者は内訳に関し「白票7、2人の候補者とは別の名前1」だったとささやく。
 党内には、小池百合子東京都知事に近い若狭勝衆院議員らが結成を目指す新党への関心も高く、合流を狙ったとみられる離党者が相次いでいる。そうしたことから無効票について、党中堅は「離党予備軍だろう」と指摘する。
 ただ、8月中旬に離党届を提出した一人は「代表選告示前でないと失礼になる」と語っていた。前原陣営幹部は無効票を投じた8人の行動に「それならこの場に来るな。どういう神経をしているのか」と不快感をあらわにした。党内の結束を固められるのか、前原氏には早くも正念場が訪れている。

 ◇路線見直しか
 喫緊の課題は、次期衆院選での共産党との連携の是非について、方向性を示すことだ。代表選で前原氏は蓮舫執行部が進めた共産党との共闘路線の転換を主張。共闘に不満を抱く保守系議員らの支持を広く集めた。
 前原氏を支援した榛葉賀津也参院国対委員長は1日、記者団に「自民党に対抗するため、左に寄ったりすることなく本流を狙っていくべきだ」と述べた。
 ただ、前原氏を支持した議員も一枚岩でない。
 松野頼久元官房副長官のグループは選挙基盤が弱い議員を多く抱え、共産党との候補一本化を求めている。前原氏を応援したのは「政界再編への期待」からで、野党共闘も容認する立場だ。前原氏は就任の記者会見で「代表は独裁者ではない。どうするかは新しい執行部で議論したい」と述べるにとどめた。
 ◇幹事長人事が鍵
 前原氏は党再生に向け挙党態勢の構築を目指す方針だが、その鍵を握るのが党務の要となる幹事長人事だ。前原氏は1日の会見で「今後、考えたい」と語り、慎重に人選する考えを示した。
 枝野陣営からは「枝野氏を幹事長に起用することで党が結束できる」との期待がある。枝野氏は国会議員支持を41人と予想していたが、実際は51人を獲得。陣営幹部は「枝野氏をむげにできないだろう」と述べた。
 ただ、共産党との共闘継続を唱えた枝野氏を幹事長に起用すれば、保守系議員らの離党の呼び水になりかねない。枝野氏は「小池新党」との連携にも否定的。党の方向性をめぐって党内が混乱する可能性もある。
 政策的には安倍晋三首相が狙う憲法改正への対応が焦点になる。
 民進党は改憲をめぐり賛否両論を抱え、常に党内対立の火種となってきた。前原氏は代表選で持論の改憲姿勢を封印したが、今後も曖昧な姿勢を取り続ければ保守系から不満が噴出しかねない。自民党が次期臨時国会に改憲案を提出した場合、前原氏は難しい対応を迫られそうだ。(2017/09/01-20:58)