水素タウンに住民反対=安全性懸念「説明不足」−五輪選手村の東京・晴海地区
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017090200374&;g=soc

 2020年東京五輪・パラリンピックの選手村が建設される東京都中央区の晴海地区での水素ステーション整備計画について、近隣マンションの住民から安全性などを理由に反対の声が上がっている。都は地区内にパイプラインを巡らせた大規模な「水素タウン」を初めて整備する方針で、大会のレガシー(遺産)にしたい意向だが、住民らは「あまりにも説明が足りない」と懸念する。
 ステーション建設が予定されているのは、同地区にある約4800平方メートルの都有地。マンションとは道路を挟み約50メートルの距離にある。
 計画では、燃料電池車(FCV)やバスへの水素供給に加え、選手村跡地に整備される住宅や商業施設に設置する燃料電池にもパイプラインを通じ供給。災害時の非常用電源としても活用できるとしている。小池百合子知事は「低炭素社会の先駆けとして東京から発信する」と位置付けている。
 建設案が示されたのは昨年3月。マンション自治会は都に説明を求めたが、「詳細が未定」と取り合ってもらえないまま、今年3月に建設が正式決定された。6月にあった住民説明会では、既存のFCV向けステーションでの一般的な安全対策などの説明にとどまった。都は9月中に整備事業者を決める方針で、具体的な対策はその後に検討すると住民側に伝えた。
 自治会は安全性への懸念が大きいとして、8月下旬に建設反対の署名活動を実施。1週間で119世帯から署名が集まった。「通学路に近く不安」「騒音が出るのでは」との意見が出たほか、既存住宅への水素供給はないため、「メリットがないのにリスクのみ負わされる」という声もあった。
 自治会長の中山勝利さん(48)は「都に何度も説明を求めたが明確な回答はなく、不信感ばかりが募っている」と憤る。水素は将来のエネルギーとして期待されるが、「五輪開催に整備を間に合わせるため、住民をないがしろにしているのでは」と指摘している。(2017/09/02-15:55)