http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170907/k10011130671000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_002

5日、日本航空機がエンジンの不具合で羽田空港に緊急着陸したトラブルで、国の運輸安全委員会はタービンの羽根が200枚以上損傷し、事故につながりかねない重大なトラブルだとして今後、エンジンを製造したアメリカの航空当局と連携して詳しい調査を行う考えを明らかにしました。

5日午前、羽田発ニューヨーク行きの日本航空6便、ボーイング777型機で離陸直後に左のエンジンから火が出て、およそ1時間後に羽田空港に緊急着陸しました。国の運輸安全委員会は事故につながりかねない重大インシデントだとして、航空事故調査官3人を羽田空港に派遣し調査を始めました。

7日の調査では機長などから事情を聞いた上で、エンジンの内部を見たところ、タービンのブレードと呼ばれる金属製の羽根が後方の2段にわたって200枚以上が欠けたり無くなったりしているのを確認したということです。

調査のあと船木慎吾主席調査官は「タービン周辺の部品にも穴が空いているのを確認した。今後、フライトレコーダーなどの分析を行うとともにアメリカの当局と調整して詳細な調査を行っていく」と述べ、エンジンを製造した会社があるアメリカのNTSB=国家運輸安全委員会と連携して詳しい原因を調べる考えを明らかにしました。

トラブルのエンジンは米GE製

今回トラブルがあったのはアメリカのゼネラル・エレクトリック社が製造した「GE90115B」と呼ばれるエンジンです。全長は7メートル30センチ、最大の直径は3メートル40センチで現在、世界で使われている航空機のジェットエンジンの中では最大の推力を誇ります。

ゼネラル・エレクトリック社の日本法人によりますと平成16年に日本航空が初めて導入し、現在は世界中で2000台以上が運用されて総飛行時間は合わせて4800万時間を超えていますがこれまでタービンが主な原因となったトラブルは確認されていないということです。

専門家「ブレードの金属疲労か」

国の運輸安全委員会の統括航空事故調査官を務めた第一工業大学の楠原利行教授はタービンのブレードが損傷した原因について、「エンジン内は高温、高圧の空気が高速で流れているため部品への負担が大きく金属疲労が発生しやすい。タービンのブレードかその周辺の部品などが金属疲労から損傷して外れ、それが高速で回転している後ろのブレードを次々に損傷させていった可能性が推測される」と指摘しています。

また、エンジンから火が出た理由については、「タービンのブレードが破損して後ろに流れるはずの空気が遮られたことで、エンジン内の空気と燃料の割合が変化して不完全燃焼を起こし、火が吹き出した可能性が考えられる」と話しています。

過去のブレード損傷トラブル

旅客機のエンジンにあるタービンは、燃料を燃やして発生したガスの勢いで高速回転して機体の推進力などを生み出すものです。タービンは複数の段に分かれていて、それぞれの段に「ブレード」と呼ばれる金属製の羽根が多いもので100枚以上ついています。

運航中の機体でこのブレードが損傷するトラブルは過去に繰り返し起きています。去年5月には、羽田空港で、離陸滑走中の大韓航空機のエンジンから火が出て乗客が緊急脱出しました。国の運輸安全委員会のこれまでの調査で複数のブレードが損傷していたほか、根元にある円盤状のタービンの部品も壊れていたことがわかっています。

また、去年、全日空のボーイング787型機のエンジンで不具合が3件相次ぎ、調査によってブレードが想定よりも早く腐食して折れるおそれがあることがわかりました。全日空はエンジンの交換サイクルを前倒しする措置を講じています。

過去のトラブルの報告書などによりますとブレードは高温高圧のガスを受け続けるため金属疲労や腐食によって損傷することがあり、ガスを近くで受ける前方側のタービンで損傷が起こることが多いということです。

9月7日 18時30分

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