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9月8日 18時27分

水俣病の患者の男性が、原因企業のチッソから賠償金を受け取ったことで熊本県から補償を受けられなくなり、その取り消しを求めた裁判で、最高裁判所は「損害が補填(ほてん)されている場合は補償すべきものはない」として、2審判決を取り消し、男性の訴えを退ける判決を言い渡しました。

6年前に水俣病と認定された川上敏行さん(92歳)は、公害健康被害補償法に基づいて熊本県に補償を請求しましたが、過去に起こした民事裁判で、原因企業のチッソから800万円の賠償金を受け取っていたことを理由に補償を行わないという決定を受けたため、取り消しを求める訴えを起こしました。

法律には、患者が損害の補填(ほてん)を受けた場合は、自治体は補償の義務を免れるという規定があり、1審の熊本地方裁判所は訴えを退けましたが、2審の福岡高等裁判所は「自治体による補償には、社会保障的な要素もある」などとして訴えを認め、熊本県が上告していました。

8日の判決で、最高裁判所第2小法廷の小貫芳信裁判長は「法律に基づく補償は、原因を作った者が負担すべき賠償の代わりとして支給されるもので、損害がすべて補填されている場合は補償すべきものはない」という判断を示して、2審の判決を取り消し、訴えを退けました。

判決は、法律に基づく水俣病の患者などへの補償について、司法が行政の解釈を支持した形となりました。
原告側「マイナスの判決だ」
原告の川上敏行さんの弁護団は、東京・千代田区で会見を開き、判決について報告を受けた川上さんが「がっくりきました。最高裁より上はないのですね」と落胆した様子で話していたことを明らかにしました。

中島光孝弁護士は「最高裁判所には、法律の解釈や不備を整理して、原告の訴えを認めてもらいたかった。水俣病の被害救済という観点からもマイナスの判決だ」と批判しました。
熊本県知事「水俣病問題 真摯(しんし)に取り組む」
熊本県の蒲島郁夫知事は「原告の男性には、長期間にわたってご心労をおかけし、心が痛む思いです。判決はこれまでの県の主張を認める内容でしたが、県として今後も真摯(しんし)に水俣病問題に取り組んでいきます」と話しています。