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Karen Braun

[シカゴ 6日 ロイター] - 大型ハリケーン「イルマ」は最強の「カテゴリー5」に発達し、カリブ海の島々を直撃している。テキサス州南東部を襲ったハリケーン「ハービー」が壊滅的被害を与えたばかりなだけに、イルマの予想進路に位置する地域住民や企業はその猛威に備えている。

米国立ハリケーンセンター(NHC)の最新予報では、イルマは今週にかけて大アンティル諸島を西北に進み、生命を脅かす恐れのある大型ハリケーンとしてフロリダ州南部に10日上陸するとみられる。

だがイルマが過ぎ去ったとしても、大西洋海盆で再び熱帯低気圧が形成されるリスクは残る。まだ時期尚早ではあるが、向こう2週間以内に新たなハリケーン「ホセ」が、米沿岸部にとって明らかな脅威となる可能性もある。

たとえホセが都合良く海上に居座り続けたとしても、大西洋上で熱帯低気圧が活発に発生するパターンが9月後半まで、もしくはそれ以降も続くことを気象モデルは示している。今週末はハリケーンシーズンのピークを迎えることになるが、気象状況次第では、10月に入っても危険な熱帯低気圧が形成される恐れがある。

大型ハリケーン「ハービー」が先週、米国の石油・エネルギー産業を揺るがしたように、イルマも農業に壊滅的被害をもたらす可能性がある。米国の畜産業は南東部の州に集中しているからだ。また、ジョージア州は国内で2番目に綿の産出量が多いが、収穫は今月後半に始まる。

トウモロコシや大豆の主要産地は直接的被害を受ける地域から遠く離れているものの、穀物市場は、飼料工場や港への供給ルートといった物流が中断される可能性があり、イルマによる間接的影響を被る可能性がある。

<進行中の脅威>

熱帯大西洋の状況が、温かい海水と穏やかな高層風とあいまって、ハリケーンの活動を非常に後押ししている。したがって、今週初めにイルマに続く熱帯低気圧が発生しても意外ではなかった。この熱帯低気圧は「ホセ」と名付けられ、6日に最大風速が毎時119キロ以上とされるハリケーンに発達した。

NHCの予報では、ホセは北方に進み、今週末にかけてリーワード諸島を通過し11日朝までには海上に抜けるとみられている。ホセはイルマほどの勢力ではないと予想されている。

NHCは12日以降の正式な予報をまだ発表していないが、他の一部の予報によると、イルマと低気圧の谷の両方が米北東部沿岸から移動するため、12日にホセが停滞する可能性があるという。

こうなった場合、ホセは、熱帯低気圧の発生を後押しする温かい海域に向かって南方へと漂い、偏東貿易風にぶつかる可能性が高まる。そうなれば、ホセが米沿岸部を脅かす可能性が出てくる。

6日正午に発表された米国の気象予報システム「グローバル・フォーキャスト・システム(GFS)」の予報では、ホセは熱帯低気圧に変わり、14日までに陸から離れて北東に向かう可能性を示している。これは、2つの壊滅的なハリケーンから今なお回復途上にある大西洋の西側の住民にとって最善のシナリオである。

<イルマの可能性>

イルマは6日、毎時298キロの最大風速でカリブ諸島のバーブーダ島とセントマーチン島を直撃。北大西洋海盆において、2番目に強い風速記録に並んだ。

これによりイルマは、毎時251キロ以上のハリケーンが該当する「カテゴリー5」に分類された。北大西洋のハリケーンは、風速が毎時177キロを超えると「大型」とみなされる。

大型ハリケーンのイルマは10日にもフロリダ州マイアミ付近に上陸するとみられる。同州南部では、1992年にカテゴリー5の大型ハリケーン「アンドリュー」が上陸している。

イルマはそのころまで大型ハリケーンであり続けるだろうが、カテゴリー5を維持しているかはまだ分からない。イルマとフロリダ州との間の海水は、イルマの現在位置付近の海水よりも温かく、同州に接近するにつれ、イルマの勢力が維持あるいは増大する可能性を秘めている。

フロリダ州に上陸後、イルマは北進を続け、大西洋側の同州の大半を縦断するだろう。北東沖にそれて、11日ごろにジョージア州もしくはノースカロライナ州やサウスカロライナ州に再上陸する恐れもある。

ホセを停滞させるかもしれないのと同じ低気圧の谷が、イルマの経路に影響を及ぼす可能性がある。米北東部を抜けるまで、経路は中緯度の気象状況に左右される。大西洋のハリケーンは勢力が強いほど、風のパターンで生じる非対称のせいで右方向に曲がりやすい。

2017年9月8日 / 01:01 / 2時間前更新