車両が燃えた小田急線 都市交通は首都直下型地震が来ても大丈夫か
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 小田急線普通電車が10日午後4時ごろ、都内の参宮橋駅近くで起きた火災で屋根に火が燃え移り、あわや大惨事となりかねない事態となった。

 火元となったのは線路脇のオザキボクシングジムが入る3階建ての建物(渋谷区代々木5丁目)。火災の一報に消防隊から要請を受けた代々木署員が現場近くにある踏切の非常停止ボタンを押したところ、一番近くを走行していた新宿行きの電車が緊急停止。
それが火災現場の前だったことでよもやの展開となった。

 強風にあおられ、ボクシングジムからの火は8両編成の2両目屋根に燃え移った。すると状況がよく分かっていない電車は、火がついたまま動きだし、見ていた通行人らは「(乗客は)後ろに行け」と声が飛び交った。

 再び停止したところで、消防士からようやく事態を察知した運転士が乗客を後部車両に誘導。約300人いた乗客は避難し、事なきを得た。

 元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は「首都圏は建物が過密化していて、鉄道線路のギリギリまで建物が立ち並んでいる。
寸法的には安全限界をクリアしていても今回のように線路間際の火災で延焼してしまった。車両は燃えます。東京の都市環境がゆえの背景」と指摘する。

 今回の火災でケガ人こそ出なかったが、小田急線の車内では停車と発車を繰り返した末に避難アナウンスが流れ、「窓を開けろ」「早く出せ」と一部でパニックとなる場面もあった。

「都営地下鉄やゆりかもめなど車掌がいない無人車両も増えている。人件費や諸経費削減は理解できるが、安全は軽視されている」(同)

 3年前にはJR有楽町駅前のビルから出火し、線路が近接していた東海道新幹線が全面運休したこともあった。
「首都直下地震が発生し、都内全域で今回のような沿線で同時多発火災が起きれば、車両を媒介して延焼が拡大するケースも想定される。国や東京都は木造住宅密集火災こそ想定しているが、鉄道車両密集火災の事態も考えるべきでしょう」と金子氏は警鐘を鳴らす。

 過密都市東京ならではの車両火災。レアケースとせずに教訓とできるか。