東京新聞 2017年9月12日07時04分

一九六二年の首都高速開通以来初めての大規模改修工事が「羽田線」で本格化する。老朽化した東品川桟橋(東京都品川区)付近の高架橋を架け替える工事のため、
首都高速道路会社は十四日午前一時から、迂回(うかい)路の使用を始める。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックまでに新たな高架橋が開通する予定だ。

首都高会社は、首都高で開通後五十年前後たつ五区間を造り直す大掛かりな改修を行う予定で、羽田線の工事はその第一弾。
同線は東京五輪・パラリンピックの際、都心にある競技場などと羽田空港をつなぐ重要な役割を担うことから、優先して工事を進める。

羽田線は浜崎橋ジャンクション−高速大師橋の全長一四・七キロで、最初に造り直すのは、運河上を通る東品川桟橋から鮫洲埋め立て部の約一・九キロの高架橋。
一九六四年の東京五輪に間に合わせるための突貫工事で、開幕十カ月前の六三年十二月に開通した。
運河上の部分は水面から高さ約三メートルで橋下に船などが潜り込みにくいため、維持管理が難しく、橋脚などで腐食が進んでいた。工事では水面からの高さを最高二十メートルまで引き上げる。

工事は二〇一四年度から始まった。迂回路を使用しながら、現在の高架橋を取り壊した上で、二〇年東京五輪・パラリンピックまでに上り線を、二三年度中に下り線をそれぞれ完成させ、その後に迂回路を取り壊す計画だ。

この区間以外に大規模改修するのは、羽田線の高速大師橋の一部、渋谷線池尻−三軒茶屋、都心環状線の竹橋−江戸橋と銀座−京橋の計四区間。高架橋を架け替えたり、道路を地下化したりする。

ほかにも、劣化が進んで補修が必要な区間が五十五キロ分あり、総事業費は約六千三百億円に上る。二八年度までに終える予定。

首都高速の改修・修繕費六千三百億円について、首都高速道路会社は金融機関からの借金を積み増して対応する。ただ、日本橋を覆う首都高の高架橋を地下化する計画も新たに浮上し、費用はさらに膨らみそうだ。

国土交通省は七月、改修対象の都心環状線竹橋−江戸橋間で、日本橋(中央区)を覆う高架橋を地下化する方針を打ち出した。地下化には当初予定の改修費約千四百億円を上回る数千億円が必要。
国や都、民間も負担するが、国交省は「首都高会社にも負担を求める」(道路局)とする。

首都高をはじめ、東名高速や名神高速など、国内の高速道路は高度経済成長期に建設されたものが少なくない。老朽化した道路の改修費は、首都高会社を含め旧道路公団などを民営化した五つの道路会社で計四兆円に上る。

五社は、道路建設などの借金三十八兆円を二〇五〇年までに完済、高速道路を無料開放する予定だったが、一四年の法改正で無料開放を最長十五年先延ばしして四兆円の道路改修費を捻出することになった。

収益の大半を占める道路料金の収入のうち、日常の補修費を除く全額が五〇年まで道路建設の借金返済に回る仕組みで、道路会社はそれまで自由に料金収入を改修に充てられない。

東京女子大の竹内健蔵教授(交通経済学)は「高速道路の建設費を料金収入で賄い、道路を無料開放する制度はもう限界だ。
道路会社の透明性や自主性を高めた上で料金を取り続け、改修に充てられるようにするべきだ」と話す。(川上義則)

<首都高速> 1962年12月開通の都心環状線京橋−羽田線芝浦間の4・5キロに始まり、総延長318・9キロ(2017年3月末)。
東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県にまたがり、現在も横浜環状北西線などで整備が進む。用地確保が難しく、道路や川の上の高架橋が全体の76%を占める。
05年、旧首都高速道路公団が民営化され、首都高速道路会社が管理を引き継いだ。

首都高速羽田線の東品川桟橋付近。左側の2車線は新設された迂回路。中央の4車線のうち左側2車線が、今回建て替えられる。
右に延びているのは接続路=先月、東京都品川区で、本社ヘリ「おおづる」から(朝倉豊撮影)
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