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だが、筆者の考えをきっかけに、(主に生まれつきだとしても)自己愛の強い2人の世界的リーダーが、生死やテレビ視聴率に関して方針を直ちに変えるとは全く思えない。

したがって、次善策を提案したい。ジャーナリストは、あたかも状況が一変し、戦争が間近に迫っているかのように北朝鮮情勢について書いたり、放送したりするのをやめるべきだ。

北朝鮮は長年、使用可能な核兵器備蓄を追い求めてきた。最近実施された核地下実験は、これまでのものより威力が大きく、TNT火薬換算で10万トン以上の爆発規模だったとみられている。これは、長崎に落とされた原爆の4─5倍に相当することを意味している。以前より大きな威力を持つ今回の実験は、水素化ウランを用いた核分裂爆弾か、「水素爆弾」として一般的に知られる核融合爆弾だった可能性がある。ただし、現在入手可能な情報では、どちらであったのか専門家も判断できない。

たとえ9月3日の核実験が、本物の水素爆弾に関するものだったとしても、それが「ゲームチェンジャー」にはならないと、米ロスアラモス国立研究所の元所長で、北朝鮮の核プログラムに関して米国有数の専門家であるシグフリード・ヘッカー氏は、筆者が編集する「原子科学者会報」で指摘している。

米都市に北朝鮮の核爆弾が落とされるなら、それが核分裂型であろうと核融合型であろうと、威力が20キロトン、100キロトン、あるいは800キロトンであろうと、壊滅的被害をもたらし、数万人の命が瞬時に奪われるだろう。これは衝撃的な行く末である。だが再度述べるが、北朝鮮の指導者らは、米国またはその同盟国に核兵器を打ち込めば、自国にとって自殺行為であると認識している。

北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射実験は、各国の報道機関が伝えるべき重要なニュースであることに間違いない。しかし、この「危機」に世界の報道機関が与えている緊急性は、実際のところ、それを拡大させる要因となっている。その結果、誤算と戦争の機会が生まれている。

正恩氏とトランプ氏のパペットショーを大きく取り上げず、北朝鮮は米国に重大な攻撃を仕掛けるなら直ちに消え去ってしまう貧しい小国であり、故にそのような攻撃の可能性はほとんどあり得ないという現実を直視するジャーナリストが増えるなら、北朝鮮情勢は、長く困難ではあるが、受け入れ可能な解決策へと導く外交へと向かうかもしれない。危機をあおるようなメディア環境がなければ、米国が先制攻撃する可能性も同様に小さい。

ジャーナリストが、米国と北朝鮮の指導者に責任ある行動をさせることはできない。だが、この「危機」は朝鮮半島で起きている対立であり、大言壮語にあふれるパペットショーはプロの外交に取って代わる哀れな身代わりすぎないことを、読者に理解させることには貢献できるだろう。

終わり