◇塾や部活、NPOも競合

 野外活動や奉仕活動を通じて青少年を育成するボーイスカウトに加盟する子供の数が、この10年間でほぼ半数の約6万2000人(2016年度)まで減っている。全国34道県で加盟者が1000人を割り、苦しい運営を迫られているところもあり、ボーイスカウト日本連盟(東京都)は「少子化に加え、部活動や塾との両立が難しくなり、国際交流や慈善活動をするNPOも増えて差別化できなくなった」と危機感を募らせている。【長宗拓弥】

 「釣れたよ」。島根県浜田市の波止場に「浜田第2団」のボーイスカウト3人の声が響いた。自然に親しんでもらおうと、8月に指導者が釣りやロープ結びを教えていた。

 同県内のボーイスカウトは358人と、最も多かった1971年度の約2割に減った。浜田第2団には多い時で30人以上が所属し、2週間のキャンプをしたりイカダで離れ小島に行ったりしたが、現在は9人しかいない。浜崎政和・団委員長(70)は「ダイナミックな活動ができない。子供会活動と変わらず、子供たちの心には響かない」と悩む。

 同日本連盟によると、全国のボーイスカウトの加盟者数は1983年度の23万3473人を境に年々減少。06年度は11万746人だったが、16年度は6万2175人まで減った。東京や愛知、大阪など都市部の6都府県は4000人以上だが、秋田や徳島など5県は100人台で、高知は最少の39人だ。

 近年は、活動内容を絞って専門化するNPOなどが増え、ボーイスカウトの独自性を示すことが難しくなっている。また、ボーイスカウト経験者の若者が都市部に流出して指導者が少なくなっていることも、地方での減少を招いているという。

 同日本連盟は昨年10月、インターネットでアンケート(回答数312人)を実施。92%がボーイスカウトの名称を知っていたが、活動内容を知るのは18%だった。認知度を高めるため、昨年度からは各地の商業施設で「防災キャラバン」を実施。ボーイスカウトで教えるノウハウを生かし、災害時に役立つロープ結びなどを伝えている。見学した子供が興味を示し、入隊につながったケースもあるという。

 ボーイスカウト経験者で、今も神奈川県内の団を指導する宇宙飛行士の野口聡一さん(52)によると、各国の宇宙飛行士にも経験者は多いといい、「仲間と大自然を舞台に活動できるのが魅力。目標に向かって力を合わせる大切さと、国際的な交流手段として有意義であることを伝えていきたい」としている。

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 ◇ボーイスカウト

 1907年にイギリスで誕生した青少年団体。169の国と地域で約4000万人が所属する。キャンプなど野外活動や、街頭募金や清掃など奉仕活動で自主性や協調性、リーダーシップを磨く。小学1、2年の「ビーバースカウト」、小学3〜5年の「カブスカウト」、小学6年から中学生の「ボーイスカウト」など年代に分かれた教育プログラムがある。

配信9/13(水) 15:03
毎日新聞
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