朝鮮学校無償化訴訟において原告側の請求を認めた大阪地裁判決(大阪地判平29・7・28)は、

@ 文科大臣の裁量について独自の判断基準を示している。

すなわち、指定の基準として「適正な学校運営」を定める規程13条適合性に関する文科大臣の裁量を
「適合性に疑念を生じさせる特段の事情がない限り,同条適合性が認められる」と狭く解している。

A その独自の判断基準に従って、「北朝鮮の国家理念を賛美する内容の教育が行われており,
この教育に朝鮮総聯が一定程度関与していること」を認定しながら、北朝鮮や朝鮮総聯からの
「不当な支配」(教育基本法16条1項)の疑念を否定している。

なお、「不当な支配」とは、教育が国民の信託に応えて自主的に行われることをゆがめるような支配を
いうものと解され、その主体は、公権力に限られず、外国やその在日団体による影響が及んでいる
場合も含まれる(最大判昭51・5・21刑集30巻5号615頁)。

上記@については、規程13条適合性は、文科大臣の専門的・技術的な判断に委ねられ、
その裁量に逸脱・濫用があった場合に違法となるという一般的な判断基準によれば、
その逸脱・濫用の有無を判断することになる。

広島地裁(広島地判平29・7・19)と東京地裁(東京地判平29・9・13)の判決では、朝鮮総聯が
朝鮮学校と密接な関係にあり、その影響を及ぼしている旨の公安・警察関係の資料や答弁に
文科大臣が一定の信を置くことは不合理といえず、他の証拠からも適正な学校運営が
されていないことを疑わせる事情が認められるなど、その裁量に逸脱・濫用はないとして、
いずれも原告の請求を棄却している。

上記Aについては、@を否定した場合には直接問題とならないが、
認定事実からの判断には疑問が多く、上級審で支持されるとは思えない。