農水省は2018年度、家畜を診療する「産業動物獣医師」を志す学生を対象に、学費を支援する「修学資金」を手厚くする。私立の獣医系大学に通う学生向けに現在は月額最大12万円を支給しているが、これを月額最大18万円に引き上げる。学生の学費負担を減らし、不足する産業動物獣医師の育成につなげる。

 修学資金は、学生の学費負担軽減のために無利子で資金を貸し出す仕組み。産業動物獣医師になることを約束して入学した学生(地域枠入学者)や、入学後に約束した学生が対象で、実際に卒業後、一定期間産業動物獣医師として働けば返還は免除される。財源は、国と獣医師として働く地域の自治体が出し合う。

 修学資金は、国公立大学の学生の場合は月額最大10万円、私立大学の学生の場合は月額最大12万円。これとは別に地域枠入学者に対しては、入学金の全額相当水準の修学資金も支給している。

 このうち、同省は来年度から私立大学の学生向けの修学資金を、月額最大18万円に増額する。それ以外の修学資金の水準は据え置く。この必要経費として、来年度予算の概算要求に前年度より3割弱多い約2億円を盛り込んだ。

 私立大学は国公立大学よりも学費が高く、これまでの修学資金の水準では学生の負担が大きかった。これを月額最大18万円に引き上げることで、同省によると「学費を十分賄えるようになる」(畜水産安全管理課)という。

 同省が今回、学生の支援強化に乗り出すのは、産業動物獣医師の育成が急務になっているからだ。口蹄(こうてい)疫や鳥インフルエンザなど家畜伝染病の発生に備え、対応に当たる産業動物獣医師の確保は欠かせないが、地域によって不足する状況が続いている。

 同省によると、獣医師の数は年々増え、約3万9000人(14年現在)。増加傾向にあるのは犬や猫など小動物を診療する獣医師で、産業動物獣医師は横ばいが続き、全体の2割にとどまる。

配信2017年09月19日
日本農業新聞
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