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Paul Wallace

[19日 ロイター] - 先の読めない緊張感が漂っていた今年のオランダ、フランス、英国における総選挙とはまったく対照的に、24日に控えたドイツ連邦議会(下院)選挙は際立って退屈な展開となっている。

「シュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)」で知られるドイツでは、メルケル首相が4選に向けた道を固めつつあるなかで、嵐(シュトゥルム)も衝動(ドラング)もないベタなぎの選挙戦が繰り広げられている。

勝利がほぼ確実視されるメルケル首相は、フランスのマクロン大統領と協力してユーロ圏の統合を押し進め、トランプ政権下の米国が見放した「ルールに基づいた国際秩序」の擁護者となることを期待されている。

だが、メルケル首相がこうした期待を満たすことは困難を伴うだろう。国内で新たな政治的制約に直面するだけでなく、権力の源泉であったドイツ経済の強さにも、今後はストレスが加わるからだ。

メルケル首相の4期目が、油断ならない政治環境となることを各種世論調査は示している。首相は大きくリードしているものの、2013年の前回選挙に比べて支持率が伸び悩んでいる。直近の調査では、メルケル首相率いる中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)の支持率は36%で、4年前の選挙の時の41.5%より低かった。

ドイツの選挙制度では、連邦議会の議席はおおむね各党の得票数に応じて決まるため、メルケル首相は再び連立を組む必要がある。得票率5%未満の党は議席を獲得できない。

最も安定するのは、再び中道左派の社会民主党(SPD)と大連立を組むことだ。SPDの支持率は現在22%程度だ。

SPD指導部はこれに乗り気かもしれないが、多くの党員は、再び脇役に甘んじることに反対している。その見返りに選挙に勝てるわけでもないからだ。

もしメルケル首相がSPDと連立を組めない場合、2つの少数党と連立を組まざるを得なくなる可能性がある。自由民主党(FDP)と緑の党だ。これは独議会では初となる連立構造だが、自由市場を支持するFDPと、環境保護を訴える緑の党の組み合わせは分裂を呼びそうだ。SPDは、メルケル氏の2期目(2009─2013年)の連立パートナーだった。緑の党は、過去にSPDと連携していた。

こうした連立の方程式は、選挙で小数政党にサプライズが起きれば、変わる可能性がある。ただ、メルケル首相が、いくら時間をかけて連立交渉を行い、どんな連立を組んだとしても、心穏やかではいられない新たな政治現象に直面することになる。

これまでのところ、独連邦議会は欧州を席巻するポピュリズムとは無縁でいられた。しかし、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、2013年選挙で議席獲得を阻んだ「5%の壁」を、今回は突破する勢いだ。

現在10%前後の支持を得ているAfDは、2015年の亡命申請者急増で高まった社会的懸念を利用して、欧州懐疑政党を脱皮し、反移民政党へと変身した。党内部は対立で割れ、他党からも距離を置かれているが、AfDはメルケル首相の政策に対するポピュリスト的な反対勢力の足場として、連邦議会での議席を利用することができるだろう。

メルケル首相の4期目の政治環境が以前ほど好ましいものではなかったとしても、選挙戦での切り札となっている好調な経済状況さえ維持できれば、それを乗り越えることができるだろう。

首相の過去2期に引き続き、今年と来年のドイツ成長見通しは良好だ。製造業は、ドイツが誇る高品質な工業製品輸出が好調だ。経常黒字は極めて大きく、GDPの8%にあたる。好景気と国債の低金利に支えられて財政も健全で、GDPの1%程度の黒字となっている。
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2017年9月21日 / 04:42 / 1時間前更新