佐賀空港が好調だ。

 格安航空会社(LCC)の路線開設が追い風となり、年間の利用者数は4年連続で過去最高を更新し、今年度は70万人を突破する見通し。一方で、他空港より滑走路が短いことなど課題も抱えており、“視界良好”とまでは言えないのが現状だ。

 ◆LCC増便相次ぐ

 「台湾の人は佐賀への印象が良い」。6月中旬に佐賀空港で開かれた、佐賀と台湾を結ぶチャーター便の就航を記念した式典。報道陣に囲まれた台湾のLCC「タイガーエア台湾」の張鴻鐘社長は揚々と語り出し、年内を目標に定期便を運航する考えを披露した。

 今年3月には成田便が1日1便から2便、5月にはソウル便が週5便から7便に増便した。LCCの増便や誘致がきっかけとなって佐賀空港の認知度もアップし、羽田便の利用者数は9年連続で利用者数が最高を更新した。

 このほか、成田便は2年連続、ソウル便は3年連続で利用者数を更新中だ。

 ◆開港時は低空飛行

 現在は多い日で10便が運航される佐賀空港。1998年7月の開港時は東京、大阪、名古屋を結ぶ計5便で、当初は73万人の利用者数を見込んでいたが、半数以下の29万人にとどまった。規制緩和による航空自由化で価格競争が激化し、隣県の福岡空港を利用した方が運賃が安いことなどが災いした。

 利用者数が低迷する中、2003年には名古屋便、11年には大阪便が運航を休止。開港から11年度までの年間利用者数は、30万人前後と伸び悩んだ。

 ◆ハブ空港と連結

 一方で、羽田便は順調に利用実績を伸ばした。1日の便数は05年に3便、08年に4便、14年に5便と増え、搭乗率も60%台後半をキープする。佐賀空港が九州の主要空港で唯一、約1600台分の無料駐車場を備えることや、保安検査場での待ち時間も少ないため、「バスに乗る感覚で行ける空港」(県空港課)として評価を得たためだ。

 実際、上海便を利用した5割は福岡県から来た客で、うち6割を福岡市民が占める。価格が安いLCCのため、「福岡市からも利用客を呼び込める潜在能力がある」(同)と話す。

 県が15年にまとめた空港の将来像には「LCCの拠点空港化」を掲げた。24年度までに関西、中京、杭州、香港などの路線を新たに開設し、国内やアジアのハブ空港との路線を拡充させることが目標だ。

 ◇短い滑走路、誘致のハンデ

 ◆空港機能の拡充へ

 ただ、利用促進に向けては課題も多い。

 滑走路の世界的な標準延長は2500メートル級とされ、近県の長崎、熊本空港はいずれも3000メートル、福岡空港は2800メートルある。これに対し、佐賀空港は2000メートルしかない。

 短い滑走路では、熟練パイロットの確保や乗客を減らして総重量を減らすことが必要になるため、LCCの誘致には大きなハンデとなる。交渉のテーブルにもつけないこともあるという。

 佐賀空港に2500メートルの滑走路を整備すれば、シンガポールなど東南アジアの路線の誘致が可能となる。ただ、延伸に向けた準備は始まったばかりで、時期さえ見通せていない。

 また、待合室の座席は国内・国際線とも約170席しかなく、複数便の同時運航ができない。また、繁忙期に航空会社が現行の小型から中型のジェット機に変更した場合、待合室が座席不足となる。保安検査場への入り口も1か所ずつしかなく、待ち時間が長くなるのもネックだ。

 県空港課の野田信二課長は「訪日外国人観光客が年々増える中、地方でも誘客のチャンスが広がった」とし、「好機を逃さないためにも空港施設の拡充は必要」と強調。その上で「路線誘致を積極的に行い、佐賀空港を『九州のゲートウェー』として発展させたい」との展望を描く。(鶴結城)
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