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江戸前ずしで光り物の代表格となるコハダに不漁の恐れが出てきた。築地市場で「全国一」の
取扱量を誇るのは佐賀産。その漁場となる有明海に臨む佐賀空港で、自衛隊のオスプレイ
配備計画が進んでいるためだ。漁師が船上で声を押し殺すほど音に敏感なコハダが万一、
プロペラ音で逃げれば、漁は成り立たない。

■極上マグロに匹敵?

鮮魚を積んだフォークリフトが慌ただしく走り回る東京・築地市場。卸大手の東都水産の担当者は
佐賀産のコハダについて、こう評価した。「東京湾で取れる江戸前より脂が乗っておいしい。
形もきれいで理想的だ。有明海は餌が豊富なんだろうね」

中でも、5〜6月に漁獲されるコハダの幼魚シンコは「とても品質が良くて、1キロ3万円ほどで取引される」
と絶賛。その存在感は「極上マグロにも匹敵する勢い」(水産関係者)だ。

佐賀からは空輸で築地市場へ届く。市場関係者によると、漁獲量も東京湾や三河湾など
「他の産地より安定している」と信頼感も大きい。

出世魚で、成魚はコノシロと呼ばれる。東京都によると、築地市場のコノシロ(シンコやコハダを含む)
取扱量は年間約514トン。このうち佐賀産は約196トンと4割近くを占め全国1位。熊本産が約149トンと
2位に続き、両県で全国の7割近くを占めた。ともに漁場は有明海で、もはや江戸前ずしにとって有明海は
「欠かすことができないネタの供給基地」(水産関係者)となっている。

■投網漁を続けるワケ

有明海でコハダ漁を営む漁師たちは、伝統的な投網漁にこだわる。最も盛んな県有明海漁協大浦支所
(太良町)によると、20隻ほどが出漁し、1隻に漁師2〜3人が乗り込む。

漁場に近づくと、漁師たちは漁船のエンジンを止め、声を殺し、ろをこいで静かに近づく。
水面に目を凝らして魚影を見つけると、指さして合図し、網を投げる。手で引き上げ、うまくいけば
銀色に輝くコハダが大量に船上で跳びはねる。

昔ながらの漁法にこだわるのは「コハダが非常に音に敏感だから」(下田貴利支所長)だ。

有明海は、二枚貝など漁業資源の減少に歯止めがかからない。国営諫早湾干拓事業(長崎県)の影響で
「赤潮が頻発するなど漁業環境が悪化している」と漁業者の主張もある中、コハダは「年間を通じて漁が
できる大切な収入源」(下田支所長)。後継者も育っており、もし不漁となれば「漁業を継承できなくなる」
と漁業者たちは不安を募らせる。