カズオ・イシグロのノーベル文学賞を福岡伸一は“予言”していた
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171005-00000084-sasahi-soci

ちょうどカズオ・イシグロ本人が、本のプロモーションのため、ニューヨークにやってきた。トークショーの会場は超満員。
5歳のときに日本から英国に渡った彼は完璧な英語で話す。朗読のあと読者の質問に答える。
「(日英)二つの文化の間で自分をどう位置づけていますか」「アイデンティティーの問題は私のテーマではない。
昔はその問いがプレッシャーだったが今はそこから自由になっています」「

読書界では早くも議論が起きている。なぜ中世なのか。なぜドラゴンなのか。夢か現実か分からない記述はだるい……でも舞台設定に惑わされてはならない。
前作が、クローン問題や現代医療への批判として書かれた近未来小説のように見えてそうではなかったのと同じように、
今回の物語も聖杯探求譚やアーサー王の伝奇物語ではない。一貫したイシグロのテーマは「記憶」である。
私を私としてつなぎとめているのは危うい私の記憶だけだ。前作では個人的な記憶がその人の悲惨な運命をどう救済するかが描かれた。
今作ではそれをさらに進化させ、社会が共通して抱えている――あるいは共通して忘れている――記憶の変容と意味が問われている。
私はとてつもなく面白く読んだ。イシグロはいずれノーベル文学賞をとると思う。