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■知事からの手紙

滋賀県知事からの“お祝いの手紙”
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171006/K10011169581_1710061127_1710061128_01_05.jpg

事態を重く見た滋賀県でも対策を進めています。合格者には県の人事担当から「おめでとうございます。これから一緒に働きましょう」と直接、祝福の電話をかけるようにしています。

さらに知事からお祝いの手紙も送ります。そこでは「滋賀県は日本の真ん中にあり人の交流と物流の結び目の地」「琵琶湖を真ん中に、琵琶湖と共に生きる私たちの営みを世界の動きの中でとらえ」「先駆的な取り組みで世界に貢献していきたい」と滋賀県で働く魅力を訴えています。

そして「今、一番おもしろいのは暮らしや経済に総合的に取り組む“地方自治”」と公務員の魅力にも触れ「この挑戦には新しい力が必要です」などと県職員として意欲的に働いて欲しいと強く訴えています。

さらに今年度からは合格者全員を対象にしたガイダンスを8月に開き、合格者同士のつながりも深めるようにしました。こうした取り組みで迷った末に、職員になる道を選んだ人もいると言います。

「入庁するまでに県職員になるという意識と気持ちを高めて欲しいと思いさまざまな取り組みを行っている。合格者はぜひ県のために働いて欲しい」滋賀県人事課の荻野大さんはそう話していました。

■人材“奪い合い”の皮肉な現状

公務員採用の厳しい状況について、全国で公務員の採用試験などに向けたコースを提供している予備校「東京アカデミー」に聞いてみました。

東京アカデミーも公務員志望者が減る中、学生を自治体間で取り合う競争が起きているとみています。学生の売り手市場で民間企業が待遇を改善→民間企業の志望者が増加・公務員の志望者が減少→自治体の間で学生の取り合いが激化…という見方です。

「民間企業が採用活動で積極的な姿勢を強めたのは5年ほど前から。このため自治体は応募者を増やすためほかの自治体と試験日が重ならないようにしたり筆記試験の負担を軽くしたりする動きが出てきた。しかし、複数の自治体を受けられるようになり、今度は自治体の間で内定者を奪い合うという皮肉な事態になっている」担当者はそう話していました。さらに「売手市場の中、学生も比較的気軽に内定を断るようになっている」とも話していました。

■“人手不足”が行政にも影?

人手不足が経済を停滞させるおそれが懸念されています。取材を進めるとその影響がいま民間企業にとどまらず、安定した採用を続けてきた地方自治体にも及んでいる実態が見えてきました。

今後、仮に職員が思うように採用できなくなれば、都道府県や市町村が担っている行政サービスが十分に提供できなくなるおそれも懸念されます。

歴史的な水準にある人手不足の問題が、地方を中心に今後さらに深刻化する可能性を改めて強く感じました。

おわり