「北海道職員の採用辞退率が6割を超えている」 先日、そんなニュースが飛び込んできました。調べていくと、近年、各地の地方自治体でも同じような事態が起きていることがわかってきました。人気だった地方公務員、その採用現場で何が起きているのでしょうか。(ネットワーク報道部記者 高橋大地 野田綾 伊賀亮人)

■売手市場といっても、まさか

「北海道職員の採用試験の合格者の6割前後がここ数年採用を辞退している」

今月になって入ってきたニュースです。都道府県の職員と言えば、安定していて、地元に貢献できる職業。地方では特に人気が高いというイメージがありました。

最近の就職戦線は、学生優位の売手市場が続いているとはいっても、いくらなんでも6割は高すぎるのではないか。何が起きているのか、北海道庁の人事委員会事務局に聞いてみました。

■40人定員で合格390人

まず辞退者の割合です。大卒の一般行政の職員の場合、採用を辞退する割合はおととしが58.8%。去年はさらに上がって62.9%。確かに2年続いて6割前後の辞退者が出ていました。辞退者が引き続き多くなることを見込んで、ことしは140人の採用予定に対して2.8倍にあたる390人余りを合格にしたそうです。辞退者が相次ぐ理由を事務局ではこう分析していました。

「北海道ではこれまで札幌市と試験日が同じだった。しかし、多くの人に受験してもらえるよう試験の日程を別の日にずらし、併願できるようにした。その結果、両方に合格した学生が札幌市をはじめとした道内の自治体に流れた」

試験日をずらしたことが裏目に出てしまったという分析です。ではなぜ、札幌市などに流れたのでしょうか?

■地元志向が影響?

「広い北海道では道庁に勤務すると、各地の振興局など札幌から数百キロ離れた場所に赴任することもある。これを嫌い地元の自治体を希望する内定者が多いのではないか」

地元志向の強さが内定者が流れた原因の一つと見ています。

しかし人事局では、勤務地が地元から離れた場所になることは、働く上で魅力のひとつだと、これからも学生に訴えていく考えです。

「全道各地に勤務することで、それぞれの場所の魅力を知ることができる。さまざまなところで働けることは、逆に魅力なのだとアピールしていきたい」

“さまざまな場所で働けることは地域を知り、社会人としても成長できる利点、それを学生に理解してもらいたい”そう訴えているように感じました。

■引き止め策に地域限定職員

合格者を引き止めるため、新たな対策を始めている県もあります。秋田県です。

大卒、高卒それぞれの採用試験の合格者のうち、例年2割程度が辞退していると言います。東京都と千葉県、埼玉県を合わせたほど面積のある秋田県。やはり、県の中でも地元を志向する傾向が強く、県内の自治体に合格者が流れていると見ています。

そこで2年前から、高卒程度の一般事務を対象に、勤務地を県の北部地域に限定した採用枠を用意しました。勤務地を限定しても給与などの待遇は変わりません。

秋田県人事委員会事務局は「一定限の効果は上がっている。地元自治体との併願は仕方ないので、県庁ならではの魅力や働き方をPRして辞退者を減らしていきたい」と話しています。

■滋賀県では初の2次募集も

求めている人材が集まらなかったり、辞退者が出たりして、定員を確保できず初めて2次募集を行った県もあります。滋賀県です。

去年、土木の技術職の応募が少なかったこともあり、採用試験では22人の募集に対して合格者は16人。定員を確保できませんでした。

さらに去年は一般の行政職でもおよそ10人の辞退者が出たほか、定員1人の機械職でも合格者が辞退。採用者が0になりました。このため、県は初めて2次募集を行い職員を確保したのです。

>>2以降に続く

配信10月6日 11時31分
NHK NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171006/k10011169581000.html