http://jp.wsj.com/articles/SB12094166559930614459204583431790207292264
 【シドニー】オーストラリアでドローン撮影を手掛ける会社を創業したダニエル・パーフィット氏は、
内陸部での2日間にわたる作業に最適な機材を見つけたと思った。
翼幅2メートルほどのそのドローンはステルス爆撃機に似ており、価格は約8万米ドル(約900万円)だった。

 1つだけ問題があった。オーストラリアの空を支配するオナガイヌワシを怒らせたのだ。
 オナガイヌワシは上空から舞い降り、カーボンファイバー製の機体に鋭い爪で穴を開けた。
ドローンはコントロールを失って墜落。
「最終日の最終飛行の残り15分。そこでオナガイヌワシがドローンに急降下爆弾を落とした」とパーフィット氏は語った。

 ドローンは大きいため鳥によるダメージを受けないと思っていたが、機体は「粉々になった」という。

 大きいものでは重さ約4キロ、翼幅約240センチにもなるオナガイヌワシはオーストラリア最大の猛禽(もうきん)類だ。
かつてはヒツジを襲うと嫌われ、賞金目当てにも狙われたが、現在はおおむね保護されている。
タスマニア州に生息する亜種は今も絶滅の危機にひんしているが、それ以外はオーストラリア広域の上空を誇らしげに舞っている。

 オナガイヌワシには、ドローンに頂点捕食者の座を譲る気はないようだ。
ハンググライダーに乗って時折現れる人間を攻撃してくることさえあるという。

 ドローンを攻撃する鳥は世界中にいるが、オナガイヌワシは特に空中戦が好きだとドローン操縦士らは話す。
 ナガイヌワシとの衝突を回避する長期的な解決策はまだない。
ドローンに「目」をつけるといったカムフラージュはあまり効果がないようだ。
ペッパースプレーや騒音装置を使った撃退も一部では検討されたという。

 メルボルンでドローンマッピング・検査会社「オーストラリアンUAV」を立ち上げたジェームズ・レニー氏は、
農村地帯のドローン飛行の20%がオナガイヌワシの攻撃を受けるとみている。
オナガイヌワシ9羽にドローンを追いかけられた経験もあるという。

 オナガイヌワシは、米国のハクトウワシやイヌワシよりも大きく攻撃的だ。
オーストラリア内陸部の鳥類の王者であることに議論の余地はないが、ドローンをここまで攻撃する理由は完全には解明されていない。
ドローンを餌あるいは新たなライバルとみているのだろうと専門家は話す。

 オーストラリアはドローン先進国を目指していることから、問題は一段と深刻だ。
ドローンの世界大会を最近開催したクイーンズランド州は、昨年にはドローン実験費用としてボーイングに約78万ドルを提供した。
オーストラリアで事業を拡大中のアマゾン・ドット・コムは、ドローンによる配送実験を行う可能性がある。
ドローンの人気は、広大な土地を持つ鉱山会社や牧場主などの間でも高まっている。

 オナガイヌワシは雌雄つがいで攻撃を仕掛けることが多く、最初に失敗しても攻撃をやめるとは限らない。
背後からの飛来や上からのタンデム攻撃まである。
ドローン操縦士は、降下してきた1羽を避けられても2羽目に飛びつかれる恐れがあるとレニー氏は述べた。

 ペッパースプレーはオナガイヌワシを傷つける恐れがあり、騒音装置は扱いにくい上に効果が怪しい。
そのため西オーストラリア州のセントアイブス金鉱で調査を担当しているリック・スティーブン氏らは、時間という武器を活用している。
オナガイヌワシは早朝はそれほど活動的ではない。これは日光で地面が温まるまで上昇気流が形成されないからだ。

 スティーブン氏は、オナガイヌワシの攻撃によって最初の2年半に12機のドローンを失った。
雇用主である南アフリカのゴールド・フィールズの損失は約21万ドルに上ったという。
だが朝の飛行に集中した過去1年に失ったのは2機だけだ(それ以外にニアミスが2度あった)。

 ドローン撮影会社エアリアル・イメージ・ワークスの創業から約3年、パーフィット氏は警戒を怠っていない。
最近3件の仕事はいずれもオナガイヌワシの攻撃を受けた。
 他の鳥は「ドローンに向かって飛んで来て、非常に攻撃的な動きをするが、実際に接触はしてこない。
ドローンが攻撃されて怖いのはオナガイヌワシだけだ」

画像:墜落したドローン
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-VI577_0928AN_J_20170928225637.jpg

動画:オナガイヌワシに撃墜されるドローン
https://www.youtube.com/watch?v=Hr-xBtVU4lg&;feature=youtu.be