家庭の食卓に提供することを想定したファミマの総菜の新シリーズ。王者セブンの背中を追うが……
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 パックに小分けされた切り干し大根やきんぴらごぼう、パウチに入ったハンバーグやビーフカレーなど計66種類──。コンビニエンスストア業界2位のファミリーマートが9月下旬から順次、総菜商品の新シリーズ「お母さん食堂」を販売している。

 総菜などを自宅に持ち帰って食べる「中食」市場は伸びており、その規模は10兆円に達する日も近いといわれる。コンビニの客層も近年、大きく変化した。酒やたばこのついでの食品購入から、共働き世帯や高齢者の日常的な食事を提供する役割を強化しようとしている。その主役となるのが、高品質で食べ応えのある総菜や弁当なのだ。

 さらにファミマには、総菜に力を入れるべき理由がある。サークルKサンクス(CKS)の店舗を吸収し、店舗数では国内約1万7900店と、セブン−イレブン・ジャパンに次ぐ業界2位となった同社だが、1店舗の1日当たりの売上高である「平均日販」(2017年2月期通年)では、セブン65.7万円、ローソン54.0万円に対し、ファミマ52.2万円、切り替え前のCKSに至っては42.5万円と、セブンとの差はあまりに大きい。

 ファミマの佐藤英成・常務執行役員商品本部長によれば、平均日販の内訳をファミマとセブンで比較すると、調理パンや、「FF」と呼ばれるレジ横の揚げ物類の売上高はそう変わらない。逆に大きな差があるのが、総菜や弁当など中食商品の売上高だという。

「セブンプレミアム」の名を冠したセブンの総菜は、鈴木敏文前会長(現名誉顧問)が毎日のように発売前の商品を試食し、欠点があると思えば容赦なくダメ出しをして作り直しをさせるなど、その品質にひたすらこだわり続けてきた。

「他のコンビニ各社と比べて、セブンが総菜の開発のためにかけた人手や設備投資のコストは圧倒的」(コンビニ業界関係者)。それが、現在の平均日販の差に表れているといえる。

■敵はコンビニ以外にも

 ファミマも、かつてセブンで食品本部長を務めた本多利範氏が15年に商品本部長に就き、弁当や総菜を刷新する「中食構造改革」を進めてきた。ただ、足元ではファミマよりさらに地力の弱いCKSの製造設備を強化しながら、セブンの背中を追うという闘いを強いられているのが現状だ。

 さらに、総菜のニーズは伸びているものの、敵はコンビニだけではない。何より、店舗内に調理場がある食品スーパーが得意とするところであり、スーパー最大手のイオンは近年、魚介類専門のイートインコーナーを始めるなど、小売業と食の在り方は実に多様化している。規模ではコンビニ業界2位となったファミマがセブンを追撃するには、総菜のさらなる強化が不可欠である。(岡田 悟)

配信2017.10.10
ダイヤモンド・オンライン
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