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(CNN) 米ミシガン州で葬儀業を営むスティーブン・ケンプ氏にとって、地元ジャズミュージシャンの火葬の後に開催した追悼式は大いに誇れるものだった。

ケンプ氏は「礼拝所を半分空けて、関係者がバンド仲間や友人を全員連れてきて、音楽を奏でたんだ」「聖職者が来て短い悼辞を述べた後、彼らは『聖者の行進』を演奏しながら葬儀場から出て行った」と振り返る。

ケンプ氏は葬儀業者として、葬送者の願いをかなえるのが自分の仕事だと信じている。多くの場合、今日の現実となっているのは火葬だ。

全米葬儀業者協会(NFDA)の新報告書によると、2016年には米国人の50.2%が火葬、43.5%が土葬を選んだ。こうした傾向は新しいものだが、火葬の割合が土葬を上回ったのは今回が初めてではない。割合が逆転したのは15年。48.5%の米国人が火葬を選んだのに対し、土葬を選択したのは45.4%だったという。

火葬人気の拡大は葬儀場にとって不吉な兆候といえるかもしれない。NFDAの報告書によれば、米国では葬儀場の数がこの10年間で10%近く減少。2005年の2万1495カ所から15年には1万9391カ所になった。

米シアトルで環境に優しい葬儀場を設立したジェフ・ジョーゲンセン氏は、11年前に業界に参入した際に「火葬問題」の一つとしてこのことを議論していたと話す。

葬儀業者は土葬への人々の関心を復活させようと尽力したが、これは実現しなかった。同報告書によると、人々が火葬を選ぶ理由としてはお金の節約が1位で、大きく離れた2位に手軽さが入っている。

業界の準備は整っていなかったかもしれないが、取り組みは進められてきた。米国では現在、30%近くの葬儀場が自前の火葬施設を運営している。このほか9.4%は今後5年以内に火葬施設をオープンする方針だという。

ケンプ氏によれば、米国の西海岸や北西部の一部ではもともと土葬より火葬が多かった。現在では米全土で火葬の割合が高まりつつあるという。

火葬率は米国各地で異なる。前出の報告書によると、15年の火葬率はワシントン州が76.4%でトップ。ネバダ州が75.6%、オレゴン州が74.3%、ハワイ州が72.7%、メーン州が72.4%で続いた。

ジョーゲンセン氏によれば、ワシントンやネバダ、ハワイの各州で火葬率が高い背景には、無宗教であることや教育を受けた人の割合の高さ、短期滞在者の存在といった理由がある。

教育水準が高い人は火葬を選ぶ傾向にあるほか、短期滞在者はその地で埋葬されることを望まないという。

一方、火葬率が最も低いのはミシシッピ州で20.9%。アラバマ州が25.7%、ケンタッキー州が27.3%などでこれに続いている。

ケンプ氏は南部や南東部でいまだ火葬率が低い理由について、こうした地域では伝統の力が若干強いほか、墓地も恐らく他よりも少し安いと説明する。

火葬が普及しているのは、その習慣が古くから存在し、人口の大半がヒンズー教や仏教などを信仰している地域だ。例えば、日系米国人の多くは日本国内と同様、普通は火葬を選ぶ。

無宗教の米国人はそうでない人よりも火葬を検討する場合が多い。ただ同報告書によれば、宗教が葬儀の重要な一部を占めると考える米国人の割合は、2012年の半数近くから16年には40%以下まで減少した。

世論調査機関のピュー・リサーチ・センターによれば、米国最大の宗教集団はキリスト教徒で、国民の70.6%を占める。このうち21%近くがカトリック教徒であり、カトリックの多さも火葬への移行に影響を与えている。数世紀にわたり全身埋葬を主張してきたローマ・カトリック教会だが、1960年代に火葬禁止令を撤廃している。

2017.10.14 Sat posted at 11:31 JST

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