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 TSUTAYAはCCCの子会社。図書館委託やモール型施設の立案は親会社直轄のCCCデザインカンパニーによるもので、後者こそが企画会社としての理念を色濃く反映しているものと言えるでしょう(もちろん企画会社にシフトするまでにはTSUTAYAチェーンの大きな売上が不可欠だったわけですが)。

 日本はCD・DVDのパッケージがいまだに根強く支持されている、世界的にも稀有な国です。しかしいま日本国内でも、本格的なCD・DVD業界の衰退を見越してか、TSUTAYA以外のチェーンでも新しい動きが起きています。

※編注:CCCは公式サイトでも情報コーナー「CCCの企画」を設置。武雄市図書館のほか、ガストの新メニュー開発など、さまざまな分野での企画・運営・マーケティング事例を紹介している

■大手が業態転換を進めるもののCCCが「一強」に

 TSUTAYAとともにCD・DVDレンタルを寡占しているチェーン・ゲオは、アパレルなどを中心に扱う総合リサイクルショップ「セカンドストリート」の店舗展開を急ぎ、ゲオからの業態転換も相次いでいます。

 CD・DVD販売最大手のタワーレコードは、各ブランドとコラボレーションをするカフェ店舗を多店化。また独自ブランドのアパレル展開やコンサートグッズの収納ケースなど、オリジナル商品の展開を大々的にしています。

 同じく大手のHMVは「HMV record shop」「HMV & BOOKS」など、従来とは異なったコンセプトの店舗を展開しています。

 とはいえ現状の展開だけを見ていると、いざ市場がシュリンクしてしまったとき現在の企業体力を維持するのは難しいように思えます。

 そんな中、CCCが進めているのは対自治体・対企業のBtoB型ビジネス。同業態だけを見れば市場衰退による影響は軽微といえます。Tカードもそれなりに覇権を握ったといえる規模になりました。やはり他社よりドラスティックに舵を切りつつあるCCCが、この先も関連企業の中では一強になるのではと感じます。

 そのぶん、街のTSUTAYAはこれからも徐々に減り、おそらく近い将来、CD・DVDの販売・レンタル店は大都市圏に大型店が数店残るのみとなり、それでもパッケージに触れたい趣味人が全国から集まるようになるのではないでしょうか。

 その店が結果として「わざわざそのために来てもらう滞在型の施設」になってしまいそうなのが、ある意味皮肉ではありますが。

■でも店がなくなるのはさみしい……

 一方、自分のようにいまだにレコード・CDをむさぼるように買っては聴いている人間としては、きっと頑固な趣味人にまじって滞在しまくることになるのでしょう。サブスクリプション型のサービスも併用してはいますが、サービスにリコメンドされるのは今聴いている楽曲に近しいジャンルがどうしても多くなります。これでは、自分の知らない世界と出会うおもしろみがありません。

 CDショップでたまたまジャケットが気になって試聴したり、ふらっと入った中古レコード屋で店のオヤジに半ば強引にレコードをすすめられたり、CDレンタルが通常4枚1000円のところ5枚1000円のサービスを実施していた際、その場で適当に5枚目を選んだり……そのときの好みとはまるで違う、でも素晴らしい音楽の数々と事故のように出会ってきた身としては、やはり店頭は離れがたいのです。

 パッケージは衰退しても音楽はなくなりません。願わくばできるだけ多くの方に、できるだけ多くのそんな出会いがありますように。(O.D.A.)

おわり