衆院選が終盤戦に差しかかり、ネット上でも支援者らによるツイッターなどでの「宣伝戦」が過熱している。とはいえ、どんな人たちが、どんな内容を発信しているのかつかみにくい。そんな中、安倍晋三首相にエールを送る与党第1党の応援団「自民党ネットサポーターズクラブ」(J−NSC、会員数約1万9000人)が開いた緊急総会がネット中継され、総会のやり取りからその一端が浮かんだ。【岸達也】

 公示前の10月6日夜、東京・永田町の自民党本部。約250人が集まったJ−NSC総会では、国歌斉唱後、党職員がクイズ形式でネット上で許される選挙運動の期間や内容を説明。「当選させない目的で相手候補の虚偽事項や事実をゆがめ公にすると処罰される」「悪質な誹謗(ひぼう)中傷や公然と人を侮辱する行為も処罰の対象」と公職選挙法や刑法の名誉毀損(きそん)罪、侮辱罪への注意を呼び掛けた。

 質疑応答に移ると会場は盛り上がった。ある男性サポーターが「希望NO党」「一見民主党」などの表現は誹謗中傷か、と質問。自民党ネットメディア局長でJ−NSC代表の平将明前衆院議員が「パロディーだからOKだと思います」と答え、笑いが起きた。別の男性が野党の代表と中国・人民解放軍兵士、女性候補と慰安婦のコラージュを投稿したと説明。問題はあるかとの問いに平氏は「個人のご判断だと思います」。会場に再び笑いが起きた。

 盛り上がったところで党総裁の安倍首相が登場した。大歓声と拍手の中、安倍首相は「自民党をしっかりご支援いただいていることに御礼申し上げたい」とあいさつし、サポーターたちと記念写真に納まった。

 J−NSCは党公認のボランティア組織。18歳以上で日本国籍を持つなどの条件を満たせば党員でなくても加入できる。規約で理念を「夢と希望と誇りを持てる日本を目指すため、党勢拡大をはかり、日本再建を実現する」とし、ネット投稿のほか党のビラ類のポスティング活動も担う。ネット上への書き込みは自己責任で行うとし、他者との紛争には組織として「責任を負わない」と明記する。

 サポーターの投稿内容について、自民党広報本部は取材に「総会のたびに『ポジティブな情報発信で日本の安定・発展に尽くす』と宣言している」とした。

 一般に、憲法の保障する表現の自由と誹謗中傷の境目はあいまいだ。特に選挙運動ではネガティブキャンペーンが飛び交い、自民党も「棄民党」などとパロディーにされる。とはいえ自民党ほどの規模でネット投稿に取り組む支持者を組織する党は他にはないとみられる。

<公職選挙法の虚偽事項公表罪>当選させない目的で公職の候補者に関し虚偽の事実を公にしたり、事実をゆがめて公にしたりすれば4年以下の懲役、禁錮または100万円以下の罰金

<刑法の名誉毀損罪>公然と事実を摘示(多数の人々に周知)し、人の名誉を毀損した者は3年以下の懲役、禁錮または50万円以下の罰金

<刑法の侮辱罪>公然と人を侮辱した者は拘留または科料

※総務省のホームページをもとに作成

http://mainichi.jp/senkyo/articles/20171018/k00/00m/010/172000c
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