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John Lloyd
[13日 ロイター] - 第2次世界大戦後の時代に成功を収めてきた筆者ら世代の多くは、いま、後ろめたさを感じている。それも当然だ。罪悪感を感じるべき理由は、次の世代に伝えようとしている負の遺産が、われわれ自身の怠慢によるものだからだ。

物事がうまく行かなくなると、通常やり玉に挙げられるのは政治家たちであり、彼らのせいにすることはできる。全員ではなくとも、政治家の一部は何らかの責任を問われるべきだろう。

だが、怠慢の罪を政治家だけに負わせるわけにはいかない。豊かな民主主義国において戦後の数世代が比較的安楽な暮らしを楽しめたのは、生活水準が向上し、選択肢が広がり、社会がより寛容になり、米国の覇権のもとで安全が保証され、国家からの給付がたいていはさらに充実していく、といった諸条件を乱すまいという、暗黙の、集団的な合意がもたらした結果だったのである。

私たちが残す負の遺産は、憂鬱で恐ろしい代物であり、通常は、ため息と一時的な恐怖の身震いとともに無視されてしまう。だが最近はその身震いがなかなか収まらない。というのも、負の遺産の1要素である核兵器によって保障されていた安全が、これまでより確かではないように感じられるからだ。報道によれば、北朝鮮は米国と欧州の大半、そしてもちろん、米国の同盟国である韓国と日本を攻撃可能な核ミサイル開発を進めていると言われている。

ここで諸悪の根源とされているのは北朝鮮の指導者である金正恩氏だが、「北朝鮮を地図上から抹消する」というトランプ大統領の脅迫にしても、どうやら脅威をさらに高めようとする金正恩氏の決意を強めるだけに終わりそうである。

抑止力は働いておらず、有効な選択肢は限られているように思われる。

国家安全保障会議(NSC)でかつて戦略担当ディレクターを務めていた法学者フィリップ・ボビット氏が推奨するプランは、北朝鮮に「核による保障」を提供するよう中国を説得することだ。

これは実質的に、北朝鮮が独自の核開発プログラムを棚上げすることを条件に、中国による「核の傘」を北朝鮮にまで拡げるという意味だ。仮想敵国に対して核戦力の拡大を推奨するというのは破れかぶれの手段だが、それに代わる選択肢があまりに不毛で恐ろしいため、一考の余地が出てきてしまった。

核兵器の恐怖をもたらすのは北朝鮮だけではない。ペリー元米国防長官は、ある解説記事のなかで、ロシアは核戦力再編プログラムを「かなり進めている」と述べ、全面核戦争の脅威は冷戦期よりも高まっていると書いている。「米国民は、新たな核の危険に直面しているのに、知らぬが仏の状態だ」

核による絶滅は、私たちの世代が対処できなかった悪質な可能性のうち最大のものだ。

政府債務はそこまで派手ではないが、将来とりうる経済的な選択肢の幅を着実に狭めてしまっている。福祉国家による庇護の対象となる国民に、生活必需品と併せて、自動車の購入や旅行やその他の娯楽を享受する能力を与えるために、西側諸国は膨大な債務を積み上げてきた。

米国の場合、政府債務残高は今年前半に史上初の20兆ドル(約2243兆円)に達し、これは納税者1人当たり約17万ドルに相当する。これまでのところ、米国にはそれだけの借金を抱える余裕がある。だが、対国内総生産(GDP)比で見た債務がもっと大きい一部の国々では、そうはいかない。財政破たんに陥ったギリシャに次いで、欧州で最も債務水準の高い国はイタリアである。

退任するドイツのジョイブレ財務相はもっぱら欧州連合(EU)における財政緊縮派の元締めと見なされており、その評価が分かれているが、これまで「官民双方における債務増大」が非常に大きなリスクになっていると警告してきた。国際通貨基金のラガルド専務理事もこれに賛同している。
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2017年10月22日 / 03:15 / 6時間前更新