http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/102400408/
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■研究者の想像を超える独創性を発揮、最新研究
 アライグマは何かと厄介な存在だが、カラスのように頭はよいのだろうか。

 科学者らが、この愛嬌のある顔をした哺乳類で、イソップ寓話にヒントを得たテストを行った。
水位を上げればエサが手に入るという因果関係を、動物が見抜けるかを調べるというものだ。
その成果は学術誌「Animal Cognition」の11月号に発表された。

 実験の元になっているのは、「喉が渇いたカラスが水差しを見つけたが、水が少ししか入っていないためくちばしが届かない。
そこで石を落として水位を上げ、水を飲むことができた」という話だ。

 今回の研究では、飼育下のアライグマの前に、水が入った円筒形の容器を置いた。
水面に細切れのマシュマロが浮いているが、水位が低いため手(前足)は届かない。
続けて、水に石を落として水位を上げるとマシュマロが上がってくる様子を見せた。

 8匹のアライグマのうちの2匹がこれをまねて石を落とし、マシュマロを手に入れることに成功した。
3匹目は自分のやり方で問題を解決した。このメスは、容器のふちを揺すってひっくり返すという荒技を繰り出し、
おやつにありついたのだ。

 土台自体はひっくり返せないようにつくられていたものの、容器を倒せたのは「まったくの予想外」だったと話すのは、
この研究のリーダーで、米ワイオミング大学の博士課程の学生のローレン・スタントン氏。
「アライグマがいかに革新的で独創的な問題解決能力を持つか、再確認しました」
 カナダのトロントにあるヨーク大学の心理学者スーザン・マクドナルド氏も、
「1匹が装置ごとひっくり返したというのは、いかにもアライグマらしいと思いました」と言う。
アライグマがゴミ箱でよくやるようなことだからだ。

■浮くボールでどうやって?
 別の実験では、先の課題で優秀な成績を収めた2匹のアライグマに、2種類のボールが与えられた。
水に浮く軽いものと沈む重いものだ。
このとき、アライグマは同じように沈むボールを使って水位を上げるだろうと研究者は予想した。

 浮くボールではうまくいかないはずだ。
「ただし、アライグマが役に立たない物を役に立つ物に変えられるなら話は別です」と、論文の共著者である、
米ワイオミング大学動物行動・認識研究所所長のサラ・ベンソン=アムラム氏は話す。

 2匹はまたしても予想を上回り、浮くボールを繰り返し押し込んで、
「しぶきが細切れのマシュマロを跳ね上げる」ことを発見したのだ、とスタントン氏は述べている。

 うち1匹はさらに、文字通り独自のひねりを加えた。
「その場でボールを回転させる」ようにして、ボールにくっついたマシュマロを食べたという。

 このような課題を解決するとき、アライグマは
「その並外れた能力、つまり敏感で器用な手を使って世界を切りひらくのです」とマクドナルド氏
(今回の研究には関わっていない)がコメントしている。

 マクドナルド氏、スタントン氏、ベンソン=アムラム氏などの研究者は、よく裏庭に現れ、害獣と言われることも多い
この動物を研究し、その行動への理解を深めることで人間との摩擦を減らしたいと考えている。

■ほかに合格した動物はカラスや大型類人猿ぐらい
 このイソップ寓話式テストでは、アライグマが成績優秀だったとは必ずしも言えないものの、その解決法は非常に斬新だった。
 ほかの動物でこのテストに合格したのは、カラス(ニューカレドニアガラス、ミヤマガラス、カケスなど)や大型類人猿など、
わずか数種である。

 例えば、ある実験では、オランウータンたちが口いっぱいに含んだ水を筒の中に吐き出し、
底にあったピーナッツを浮かせて取るという方法をすぐに考え出した。
 別のテストでは、数匹のチンパンジーがこの解決策を見つけ出した。
そして1匹は、筒の中におしっこをすれば同じ結果が得られることに気がついたそうだ。