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2017年10月28日 17:02 発信地:英国

【10月28日 時事通信社】インターネット上にあふれる偽ニュースとどう戦うか。「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)否定論者」とされる英歴史家とかつて裁判で激突し勝訴した米エモリー大(ジョージア州)のデボラ・リップシュタット教授が来日し「車やカメラを買う時、商品を十分に吟味するように情報も精査しよう」と訴えた。

 教授は2000年、英歴史家デービッド・アービング氏が起こした名誉毀損(きそん)訴訟を受けて立ち「ホロコースト否定論」を否定してみせた。名誉毀損の事実関係について、原告に「立証させる」米国式と違い、被告に「なかった」と立証責任を課す英国式の裁判で教授が戸惑い苦闘する様子を描いた米英新作映画「否定と肯定」(16年)が12月に日本で公開される。これを前に、NPO法人ホロコースト教育資料センター(東京都品川区)が26日夜、東京都内で開いた木村草太首都大学東京教授との対談に参加した。

 裁判を戦ったアービング氏は当時、一定の人気を誇った歴史作家だった。「ドイツ語がうまく、他の歴史家が入手できない史料をナチスのシンパとして精力的に発掘し、文章もうまかった」と教授。しかし「誰も彼の書いていることが本当か調べなかった」と拡大解釈や歪曲(わいきょく)、すり替えが放置されていた問題点を指摘した。

 映画「否定と肯定」は、意図せず「政治指導者が好き勝手にでっち上げては、まるで真実かのように言い募る時代」(教授)に完成した。数年前、映画化の企画が始まった時は「監督もプロデューサーもまさかこんな形で現在に共鳴するとは思わなかった。とても悲しい」と教授は述べた。

 フェイスブックやツイッター、インスタグラムと、誰もが不特定多数に気軽に発信できる時代になった。だからこそ「偽情報を広める側にならないよう気を付けよう」と教授は訴える。

 「事実であってほしい事柄、自分の考えを確認してくれる情報と出会ったときこそ確認しよう。検索すれば元の情報がニューヨーク・タイムズか、それとも名前も知らない媒体か調べられる。誰かと共有する前に一瞬、疑い深い消費者であるべきだ」と呼び掛けた。(c)時事通信社