【シンガポール=吉村英輝】フィリピンのドゥテルテ大統領は、昨年6月の大統領就任後、同盟国の米国から距離を置く一方、南シナ海問題の「棚上げ」に応じる“見返り”に中国から巨額の経済支援を得るなど、外交巧者ぶりをみせてきた。だが、おひざ元の南部ミンダナオ島でイスラム過激派との紛争が発生。主要政策に掲げた「麻薬戦争」も行き詰まり、路線転換を強いられている。

 ドゥテルテ氏は訪日に先立つ29日夜、来月中旬に東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が開かれるフィリピンを訪問するトランプ米大統領について「(自分と)同じ調子でしゃべる」と東西の“暴言王”を自認しつつ、「重要な指導者として迎える」と初会談に意欲を示した。オバマ前大統領を罵倒した態度を修正しつつあるかに見える。

 ミンダナオ島マラウイの過激派掃討作戦では、同島で長年、協力関係を構築してきた米軍が実力を発揮。無人機の偵察などによる情報に基づき、慣れない市街戦に勝利した。

 ただ、トランプ氏は、来月14日予定の東アジア首脳会議(EAS)は「日程の都合」で欠席する見通しだ。フィリピンを含めた対アジア政策は見通せない。

 一方、中国側では、南シナ海問題などで日本の立場も支持するドゥテルテ氏に懐疑的な見方が強まり、「二枚舌でまた金をだまし取られる」(中国メディア)との警戒論も出ている。

 国内では「庶民派」として慕われるドゥテルテ氏だが、7〜9月期の支持率調査では、「満足」が67%と前回調査から11ポイント低下。看板政策の「麻薬戦争」の超法規的殺人に未成年者が巻き込まれる事態に不満が向かい、作戦から警察を外す方針転換に迫られた。

 掃討作戦で壊滅状態となったマラウイでは、一部で住民の帰還が始まった。復興の成否は政権への信任に直結し、「比全体に深刻な影響を与える」(ドゥテルテ氏)が、費用は巨額。米中の支援が不透明な中、最大の援助国で輸出先や対内直接投資でも1位の日本への期待が高まっている。

配信2017.10.30 21:28更新
産経ニュース
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