秋田県由利本荘市の日本海沿岸東北自動車道(日沿道)で軽乗用車に乗っていた高齢者3人が死亡した逆走事故から1年が過ぎた。

 運転者が進入路を誤ったことが原因とみられ、国や県、県警は、類似箇所に「進入禁止」の表示を設けるなどして安全対策を講じているが、悲惨な事故につながりかねない逆走事案は後を絶たない。

 県警高速隊のまとめによると、県内では今年に入ってからも、高速道路での逆走に関する通報が14件(29日時点)あり、うち3件では、駆けつけた同隊員が運転者を停車させるなどして保護した。

 このうち、今月7日午後6時頃、秋田自動車道で逆走した70歳代男性は同隊員に止められ、「慣れない土地で道に迷い、慌てて引き返した」と話した。男性は横手インターチェンジ(IC)の手前で方向を間違えたことに気づいてUターンしたという。

 9月14日午後5時頃には60歳代後半の女性が、秋田道の秋田南IC入り口付近まで入り、間違いに気づいて車をバックさせた。7月2日午後7時頃には秋田道の河辺ジャンクション(JCT)付近の追い越し車線で、70歳代男性が車を進行方向と逆向きに停車させていた。

 昨年10月、高齢者3人が死亡した逆走事故が起きた日沿道の大内JCTは、国道から高速道の上り線に向かって上がる進入路と、高速道の下り線から国道へ降りる進入路が近くにある「平面交差」と呼ばれる構造。上り線への進入口を行き過ごし、下り線の降り口へと間違って入ってしまう危険をはらんでいる。

 県道路課によると、同JCTは国の事業費削減を受け、進入路が区分される立体交差としての整備が見送られた経緯がある。日沿道ではほかに仁賀保IC、金浦ICの2か所も、同様の構造を持つ。

国土交通省秋田河川国道事務所や県は大内JCTと仁賀保IC、金浦ICで、進入口付近に、誤って進入しないよう注意を促す大型看板や、正しい進路を示す矢印看板を設置。進入路を「赤」「青」で色分けする舗装を施すなどの対策を実施した。

 全国でも平面交差のJCTやICは少なくない。例えば、首都高などを接続する美女木JCT(埼玉県戸田市)や、北陸自動車道の片山津IC(石川県加賀市)では、信号機を取り付けて交通整理をすることで、逆走防止を図っている。

 秋田県警と同事務所は18日、大内JCTの地元の交通安全協会に所属する高齢者ら約20人をバスに乗せ、逆走防止の対策箇所を案内する説明会を実施した。参加者からは「路面を色分けしたことで分かりやすい」といった受け止めや、「夜中や雪の日は見えづらい」と改善を求める声が聞かれた。

 視力や運動能力の衰えもあり、判断、操作を誤りがちな高齢ドライバーによる高速道での逆走は後を絶たない。県警高速隊は「対策を講じているとはいえ、予断は許さない。今後も粘り強く事故防止を訴えたい」としている。

 高齢者の運転に詳しい秋田大の水戸部一孝教授(人間情報工学)は「(ハード面の)対策後も誤って進入する構造は解消されていない。夜間や雪の日などに再発しかねない。バーを設置するなど物理的な防止策が望まれる」と抜本的な対策を求めている。(大塚健太郎)

 ◆逆走事故=2016年10月21日午前4時頃、由利本荘市の日本海沿岸東北自動車道大内ジャンクション付近の下り線(秋田方面)で発生。同市内の男性(当時76歳)が運転する軽乗用車が上りの新潟方面へ向かって逆走し、大型トラックと正面衝突。男性と、軽乗用車に同乗していた男性(同82歳)、女性(同79歳)の計3人が頭などを強く打って死亡した。運転者の男性は、容疑者死亡のまま自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死)容疑で書類送検され、不起訴となった。

事故の状況
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対策前
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対策後
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