2017年11月7日
 静岡大理学部の徳元俊伸教授(52)の研究室が、金魚の体内の器官が外から見える透明化に成功した。
体内の組織の発達や卵巣の様子が常時確認することができ、生殖分野などの研究への応用に期待できる。

 徳元教授は生物科学が専門で、排卵の仕組みを研究。透明金魚などから採取した卵などを使い、排卵に必要な遺伝子を見つける研究を進めている。将来は人間の不妊治療に役立てたい考えだ。

 もともと、徳元教授は金魚を用いて内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)が排卵に与える影響を調べている。
実験には産卵間近の金魚から多くの卵を採取する必要があり、「体が透明であれば、産卵が近い個体が分かり、効率良く卵を採取できる」というアイデアを持ち続けてきた。

 金魚の透明化の研究は五年ほど前に取り掛かり、エチルニトロソウレア(ENU)という突然変異を誘発する薬を使って生まれた金魚の中から色素の薄い個体を抽出。
さらに色素が薄い個体同士を掛け合わせ、透明化に近づけた。
金魚店で透明に近い雌を見つけた偶然も重なり、最初の繁殖から四世代目でほぼ透明で体内の器官が透けて見える金魚が生まれた。

 透明に生まれた金魚は銀色の色素が作れないため、目の縁が黒い。
稚魚は血液が透けるため、薄い赤色に見える。
成魚になると体全体が白みを帯びるが、卵巣や精巣のある腹の部分は透けて見え、卵の発育状況などが泳いでいる状態で分かる。

 研究成果は今年六月にルーマニアの研究雑誌「AACL Bioflux」に掲載された。
金魚の透明化の研究成果は過去に三重大などが発表しているが、論文が研究雑誌に掲載されるのは初めてという。

 徳元研究室は今月十八、十九日に静岡大静岡キャンパスで開かれる「キャンパスフェスタin静岡」で、理学部の玄関に透明金魚を展示する。

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20171107/CK2017110702000084.html
体内の器官が透けて見える金魚の稚魚=静岡市駿河区の静岡大で
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20171107/images/PK2017110702100025_size0.jpg