小さな町の教会で銃を乱射し子供を含む26人を殺した男の転落

テキサス州の小さな町にある教会で11月5日、銃を乱射して子どもを含む26人を殺害した男は無神論者で、犯行は別居中の妻の家族を狙ったものだった可能性がある。報道によると、犠牲者には容疑者の妻の祖母も含まれているという。

警察は、デビン・パトリック・ケリー容疑者の経歴や、日曜礼拝を狙って犯行に及んだ理由について、引き続き捜査中だ。しかし、容疑者の人物像や、考えうる動機が明らかになりつつある。容疑者は、離婚歴や、仕事を解雇された過去を持ち、キリスト教はくだらないと考えていた。また、空軍に勤務していたころには、妻に暴力を働いたほか、義理の息子の頭蓋骨を骨折させたこともある。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、容疑者の元同級生ニーナ・ローザ・ナヴァはフェイスブックに「(容疑者は)神の存在を信じる人たちを常にバカ呼ばわりし、無神論を説いていた」と投稿している。

ケリーが悲観的で異常な投稿を繰り返していたため、ナヴァを含むほかの友人は、彼を友達から削除したという。しかし捜査当局は、今回の銃撃事件のきっかけになったのは、ケリーの宗教的思想ではなく家庭の事情のようだと述べた。

空軍の検察官だったドン・クリステンセン元大佐は、サンアントニオ・エキスプレス・ニュース紙に対し、ケリーの最初の結婚は2012年に終わったと述べた。ケリーは当時空軍で勤務していたが、妻を殴打し、幼い義理の息子の頭蓋骨を骨折させて軍法会議にかけられたあと離婚したのだ。ケリーは12カ月拘束されたという。

ケリーの転落はそこから始まる。

■信心深かった妻

2014年にはコロラド州で、動物虐待容疑で起訴された。犬に飛び乗って頭を連打した、と近隣住民が通報したためだ。また、ハスキーの子犬を地面に叩き付けて自分のキャンピングカーまで引きずっていったという別の近隣住民の証言もある。

同年にケリーは、ダニエル・リー・シールズと再婚したが、幸せな結婚生活は長く続かなかった。2017年までには別居しており、妻の母親の携帯電話に脅迫メッセージを送っていたと、テキサス州公安局の広報担当者フリーマン・マーティンは述べている。

ケリーがサザーランドスプリングスにあるファースト・バプティスト教会を狙ったのは、妻の家族がその教会の信者だからではないか、と捜査当局はみている。妻の履歴書から、彼女が4年前から同教会で幼児を対象に教えており、多くのボランティア活動にも従事していることがわかる。

シールズの家族の大半は、5日の日曜礼拝に参列していなかった。しかし、祖母だけはその場におり、ほかの25人とともに犠牲になったと家族はCNNに語っている。

■すべては後の祭り

ABCニュースによれば、ケリーは妻と別居していただけでなく、6月には警備員の仕事をクビになっていた。ケリーは、テキサス州ニューブローンフェルズにあるリゾート施設「シュリターバーン」で警備員として1カ月ほど働いていた。しかし、「適任でない」という理由で辞めてもらったと、同施設の広報担当者ウィンター・プロサピオは声明で明らかにしている。

捜査当局は、ケリーが4丁の銃を購入できた経緯をまだ解明できていない。しかし、連邦政府の身元調査システムにケリーの名前と家庭内暴力(DV)の前科情報が登録されていなかったとしたら、銃規制の抜け穴のせいにされても仕方ないと専門家は話す。

空軍で検察官を務めたクリステンセンは、「ケリーに銃を販売すべきではなかった」と話す。「犯罪歴を考えれば、あの男に法的に銃の所有を許すなど、絶対にあってはならない」

配信2017年11月7日(火)19時20分
ニューズウィーク
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