ウイスキーを自家熟成させる「ミニ樽(たる)」で経年変化した味を楽しむ愛好家が増えている。ニッカウヰスキー創業者の半生を描いたNHK連続テレビ小説「マッサン」が火付け役となりウイスキーブームが続く中、ミニ樽の売れ行きも好調という。専門家は「ドラマの影響で『おじさんの酒』というイメージが薄れ、若年層に人気が広がっている」と分析。ウイスキーにハマる「モルト女子」も現れている。(吉国在、写真も)

 「ピーティー(スモーキー)なウイスキーが好きで、夜な夜なちびちびやっています」

 ミニ樽の「キープ」サービスを行っているバー「グラニーリーフ」(堺市東区)。自らを「モルト女子」と称する堺市美原区の私立大4年、粂(くめ)美咲さん(23)は、カウンターで笑顔をみせた。

 約2年前、「マッサン」に触発されて母親とともに自家熟成を始めた。ミニ樽で市販のシングルモルトウイスキーやバーボンなどを貯蔵。現在はライ麦を原料とするウイスキー「オールド・オーバーホルト」を熟成しており、「待ちに待って飲むのが至福のとき。インスタ(インスタグラム)映えするので、友達におしゃれ感をさりげなくアピールしています」。

 同店のバーテンダー、園田大河(たいが)さん(27)は「ミニ樽をキープしているお客さんは20〜30人ぐらい。最近では年代ものの珍しいウイスキーを注文する人も増えた」と説明する。

 大阪市城東区の会社員、原淳(あつし)さん(30)は、バーボン「ファイティング・コック」を自宅のミニ樽で寝かせている。数カ月先に飲み仲間と持ち寄り熟成具合を品評しながら堪能するつもりといい、「大人の遊びですね」と魅力を語る。

 ミニ樽は洋樽を模した円筒形の小型木製サーバー。約5年前から大阪府内の会社がメキシコから輸入・販売しており、インターネットなどで購入できる。容量も1〜5リットルまで4種類あり、購入した既製品のウイスキーを1〜3カ月間じっくり寝かせると、こだわりの自家製ウイスキーが完成する。

 木材には北米産ホワイトオークを使用。内部は強い直火で焦がして表面を炭化させる「チャーリング」が施されている。オーク材から溶け出したポリフェノールなどの成分と酒に含まれるアルコール分、空気中の酸素が作用し独特の香りと味が生まれるという。

 熟成が進むと酒は少しずつ濃厚な琥珀(こはく)色に変化し、独特の深みやまろやかさが加わる。種類の異なる酒を仕込んだ後の樽にはそれぞれの香りが染みこんでおり、仕込む順番に応じて世界に一つしかない自分好みのウイスキーを味わえる。

日本洋酒酒造組合(東京)によると、ウイスキーの出荷数量は平成19年に6万910キロリットルだったが、28年は12万5824キロリットルと10年前に比べ倍増した。ウイスキーを炭酸水で割った「ハイボール」が定番メニューとなり、26年に始まった「マッサン」もブームを後押しして若年層や女性にも人気が広がったのが要因とみられる。

 ウイスキー評論家の土屋守氏は、「ウイスキーの奥深い世界に触れ、魅了される人も増えている。知識を得れば得るほど愛着がわき、味わいも深くなる不思議なお酒。ウイスキー文化が根付くことを期待したい」と話している。

http://www.sankei.com/smp/west/news/171109/wst1711090060-s1.html
http://www.sankei.com/images/news/171109/wst1711090060-p1.jpg
http://www.sankei.com/images/news/171109/wst1711090060-p2.jpg