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■貧困の定義って?

 ちなみに、食べるものにも困り、命の危険がある状態は、「絶対的貧困」と呼ばれます。生活保護などの公的制度が適用されます。

 一方、「日本の子どもの貧困率は13.9%」という時の貧困は、「相対的貧困」です。

 少し難しい言葉ですが、相対的貧困とは、つまりは、「日本で平均的な暮らしの半分以下の収入しかない」ということです。

 「平均的な暮らし」は、国民全体がどれくらいの収入を得ているのかによって変わってきます。

 「みんなが貧しい」という状況だと、「平均的な暮らしの半分」が、ほぼほぼ絶対的貧困になるということがありえますが、今の日本は豊かな人もいますので、「平均的な暮らしの半分」の人たちは、全員が飢えているわけではありません。

 たとえば収入は、さきほどの設定の3人世帯の場合、年間の可処分所得は210万円程です。

 月に直すと、だいたい17万円。

 まさに、幸重さんの家計簿体験は、17万円という設定です。

■まずは月34万円で

 参加者はグループに分かれ、まず、「平均的な暮らし」、つまり17万円の2倍の34万円で家計簿をつけます。

 「34万円の使い道を考えるのは、盛り上がりますよ。『車は2台だから交通費はもっといるんじゃない?』『いやいや、2台もいらないよ!』とか『飲み会があるからお小遣いはもっと必要』『外食多すぎ!』とか。おじさん、おばさん、学生で立場が違うので、いろんな意見が出ます」

 「あと、意外と、自分の生活費をきちんと把握していない人が多いです。家計をパートナーに任せきりで小遣い制という男性は、自宅の光熱水費とか知りませんから。『34万円だと足りない』っていう人も。学生もまだ生活費に何がどれくらいいるのか、わかりませんしね」

 話し合った結果は、グループごとに発表します。どこにどれくらいのお金を使うのか、チームごとの価値観が反映され、違いが出ます。

「貧困たたき」をするのは誰か

 極端な貧困のイメージが広がったことで、「○○を持っているのは貧困ではない」と、「貧困たたき」が起きています。幸重さんは、どういう人がたたいているんだと思いますか?

 「批判する人は、自分も苦しい暮らしをしている人が多いですよ。自分も貧困なのだと認めたくないというのもあるでしょう。『うちだって苦しいけど、頑張った。支援をすることで子どもが甘える。我慢をするべきだ』と言われます」

 家計簿体験にある「娯楽・交際費」は、特に他人から「ぜいたくだ」と言われやすい費目です。

 「子どもにスマホなんて必要ない。ガラケーでいいと言う人がいますね。リアルが充実している子は、確かにスマホは要らないかもしれない。でもお金がないから部活ができず、親は夜遅くまで働き、友だちも少ない状態で、スマホは神のツールですよ。遊べるし、つながれるし」

 滋賀県彦根市が昨年度、小学5年生と中学2年生の持ち物を調べたところ、スマホ・携帯電話・ゲーム機の所持率は、経済的に苦しい家庭の子の方高いという結果が出ました。

続く