https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171113-00000050-mai-soci

 神奈川県座間市で9人の遺体が見つかった事件で、話題性の高い情報を載せているトレンドブログに「父親も共犯?」など事実無根の見出しや投稿を載せた管理人が、匿名を条件に毎日新聞の取材に応じた。動機を「収益目的と世間のニュースやその裏を追いたい気持ち」と説明。ブログは個人で運営し、収入は多い月で10万円台後半になるという。「フェイクニュース」生成の現場を追った。【大村健一/統合デジタル取材センター】

 ◇閲覧増やすため見出し過激に

 トレンドブログは、事件や芸能人のスキャンダルなど注目の話題を取り上げ、クリック数などに応じて報酬が支払われるネット広告(アフィリエイト広告)を収益源とすることが多い。個人運営だけでなく記者を集めて組織的に運営するものもある。

 座間市の事件を取り上げたトレンドブログは、容疑者名などをグーグル検索すると目立つ場所に多数登場する。投稿の多くは根拠のない臆測やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のうわさが混ざり、過激な見出しで人権侵害の恐れがある内容も多い。記者は座間市の事件を扱うブログの管理人15人に電子メールで質問書を送付。そのうち1人にメールのやり取りで取材した。

 この管理人は自身を「近畿地方の30代男性」とし、始めたきっかけについて「ネットでできる副業を探している時に見つけた」と答えた。ブログでは「動機は臓器売買?」「犯人は複数人?」など根拠のない内容を多数掲載。断定は避けつつ、ところどころに「犯人が複数人ということで、臓器売買ビジネスが目的ということが浮かび上がる」など論理の飛躍した文章を挿入していた。

 「父親も共犯?」という見出しの問題点を指摘すると、管理人は「検索エンジンから人にアクセスしてもらいたく、クリックしてもらえるようなタイトルをつけることを意識している」「『父親も共犯!』と断言せず、疑問符(?)をつけ事実ではない可能性が大いにあることを示唆しているつもりだ」「投稿内で『父親が共犯などあり得ない』旨の情報を伝えている」などと釈明した。その一方で「今後このような関係者への事実無根のバッシングをあおりかねない表現は慎みます」として、投稿を削除した。だが、伝聞で得たという事件関係者のプライバシーを暴く投稿を他にも多数載せており、削除しないままブログの運営を続けている。

 ◇後ろめたさを告白

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 ◇「ネットの意見まとめただけ」

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 ◇広告サービスと検索エンジン後押し?

 フェイクニュースをまき散らすトレンドブログが後を絶たないのはなぜか。

 広告収入という「実益」をもたらすサービスが後押ししている可能性がある。「近畿地方の30代男性」の利用するサービスの一つがグーグルの「アドセンス」だ。管理人がグーグルに申請しブログ内容の審査に通れば広告がつき、クリック数に応じて金が入る。申請は無料で、汗をかいて広告主を探す必要はない。

 グーグルは自社のサイト上でアドセンスの審査について、著作権を侵害したり不正行為を助長したりするのは違反とうたう。だが、著作権やプライバシーの侵害が疑われるトレンドブログが審査を多数通過しており、基準は不透明だ。

 それ以上に問題なのは、事実無根の情報を含んだトレンドブログが、グーグル検索で上位を占めていることだ。検索にかからなければ存在しないも同然。逆に検索上位なら人々を引きつけ、広告収入が転がり込む。座間市の事件では、容疑者について「実家や父親など家族情報!」とする投稿には約99万ページビューと表示されている。

 検索エンジンで圧倒的なシェアを誇るグーグルは、検索の詳しい仕組みを明かしていない。このため、投稿やページを上位に表示させる「検索エンジン最適化(SEO)」の手法が研究され、それを指南する専門の会社もある。

 ◇検索上位に並ぶのはなぜ?

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