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 宮城県沿岸のホタテ養殖で、成貝となる前の半成貝のへい死や変形が続出し、今年の水揚げは昨年の5割程度にとどまる見通しとなった。かつてない浜の窮状に、北海道産の半成貝の価格高騰が追い打ちを掛ける。来春の水揚げに向けて準備が本格化する中、養殖業者らは「史上最悪の状況。このままでは廃業だ」と危機感を募らせる。

 県漁協によると、2017年度の共販数量は10月末時点で約4000トン。水揚げは9月までに大半が終了し、最終的に昨年の約7300トンの半分強となる見通しだ。昨年から散見された貝のへい死や変形が増加した。原因は不明だという。

 水揚げ減の影響で、石巻市雄勝町の秋の風物詩であるホタテ祭りは今年、中止を余儀なくされた。

<「3枚だけ」>
 県内屈指の水揚げを誇る県漁協女川町支所の担当者は「180枚の半成貝をつるしたロープから、3枚しか採れなかったケースもある」と説明する。

 東日本大震災で、ホタテの養殖資材は大きな被害を受けた。宮城では地種を使った従来の手法から、水揚げまでの期間が短く設備費用も抑えられる半成貝移入養殖への移行が進んだ。

 しかし近年、宮城のホタテ養殖の復興を後押ししてきた北海道産の半成貝が高値で推移。同町の伊藤和幸さん(69)は「半成貝の価格は震災前の1.7倍。不漁で収入が確保できない中でコストばかり膨らみ、廃業せざるを得ない生産者も出てくる」と嘆く。

 東京電力福島第1原発事故の影響で、韓国が講じる東北の海産物の禁輸措置が価格高騰に影響していると関係者は指摘する。韓国が大量の道産ホタテを高値で買い付け、それに伴い県内の養殖業者への半成貝販売価格も上昇していると推察する。

 県漁協の大江清明ホタテ部会長(60)は「禁輸措置が宮城の養殖業の経営を圧迫している。韓国は一刻も早く、輸入を再開してほしい」と訴える。

 ホタテ不漁の余波は加工業者にも広がる。地元産のホタテを扱う石巻市の業者は昨年から、商品の内容量を減らすなどして窮状をしのいできた。担当者は「昨年の不漁に加え、今年は県産ホタテの供給が9月に止まった。冬場は引き合いが増えるが、県外産ホタテも高値で苦しい」と話した。

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