【ソウル=鈴木壮太郎】国連軍司令部は22日、南北軍事境界線がある板門店で13日に発生した北朝鮮の男性兵士の韓国亡命時の映像を公開した。事件発生当初の韓国軍の説明とは異なり、北朝鮮軍が韓国側に向けて銃撃。兵士が一時、軍事境界線を越え南側に侵入していたことも判明した。韓国では北朝鮮側に応射しなかった軍を批判する声も上がっている。

 現場の共同警備区域(JSA)に設置した監視カメラは、側溝に脱輪して停止した車から飛び出して越境した兵士を狙い、北朝鮮兵士4人が銃撃する様子をとらえていた。このうち1人が脱北兵士を追って軍事境界線を越え、慌てて引き返す様子も映していた。国連軍調査チームはこの2点について、国連軍と北朝鮮が1953年に結んだ休戦協定違反と断定した。

 その後、国連軍の指揮下にある韓国軍兵士3人がほふく前進しながら銃撃された兵士に接近。安全な場所に移送した。この間、国連軍は南側に向けて射撃した北朝鮮軍に応射しなかった。調査チームは一連の対応を「緊迫した状況で厳格な判断を下し、賢明に対処した」と評価した。

 だが、韓国内には軍の対応に不満もある。13日の事件発生当時、韓国軍は北朝鮮側が発砲した銃弾は軍事境界線を越えておらず、応射しなかったと説明していたからだ。

 国連軍の22日の発表に先立ち、北朝鮮軍が休戦協定に違反した可能性があると韓国メディアが報じると、保守系最大野党の自由韓国党は15日「軍当局は失敗を隠すことだけにきゅうきゅうとしている」と強く非難した。

 北朝鮮軍の発砲に韓国軍が応射しなかったことについて、大手紙の東亜日報は「政府が南北間で平和的な雰囲気をつくるため、あえて消極的に対応したとの見方もある」と報じた。北朝鮮は2カ月以上、核・ミサイル挑発を控えており、国際社会が北朝鮮との対話への期待を高めていたタイミングだったからだ。

 こうした声を意識してか、文在寅(ムン・ジェイン)大統領も15日「北朝鮮軍の銃弾が軍事境界線を越えていたのなら警告射撃すべきだったというのが、国民の一般的な考えだ」と軍の対応をやんわり批判したとされる。

 重傷を負った亡命兵士の容体は回復に向かっている。担当医は22日「意識は戻り、命を落とすことはない」との見方を示した。韓国メディアによると、入院先の病院は兵士の精神状態を落ち着かせるため、病室に韓国の国旗を飾ったり、韓国のテレビや歌を流したりしているという。

配信2017/11/22 18:29
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23806220S7A121C1FF2000/

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