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け模擬裁判
11月23日 19時09分

東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人が増加し、外国人が関係する事件も増えるおそれがあるとして、捜査や裁判で通訳を担う人材を確保しようと、23日、検事や通訳が参加するユニークな模擬裁判が東京外国語大学で開かれました。

この模擬裁判は東京外国語大学が東京・府中市のキャンパスで開いたもので、東京地方検察庁の検事や卒業生の通訳などが参加しました。

模擬裁判は、英語を話す外国人の被告が中国人のかばんの中から金を盗もうとしたという想定で行われ、被害者の中国人が当時の状況を証言しました。

被害者の証言はいったん中国語から日本語に訳したあと、被告にも伝わるよう、すぐに英語に訳す必要があります。

見学に訪れた人たちは、2人の通訳が素早く正確に証言を訳していく様子を興味深そうに見ていました。

法務省によりますと、全国の検察庁には英語や中国語などを中心に延べ7700人が通訳として登録されていますが、3年後の東京オリンピック・パラリンピックに向け、さらに多くの言語の通訳を確保していくことが求められるということです。

英語の通訳として模擬裁判に参加した女性は「通訳を間違えればその人の人生を変えてしまうので、慎重に訳す必要があると実感しました」と話していました。

東京地方検察庁公安部の上野正晴副部長は「通訳は中立、公正な立場で訳してもらうことが大切です。今後も大学と協力して人材確保に努めたい」と話していました。

捜査や裁判で相次ぐ誤訳

捜査当局の取り調べに対する外国人の供述や、裁判での証言などを通訳が誤訳するケースは、各地で相次いでいます。

このうち、ことし5月、大阪市内の自宅で妻を殺害したとして殺人の罪に問われた中国人の裁判員裁判では、警察の取り調べで通訳の誤訳がおよそ20か所、通訳漏れも100か所以上あったことが、取り調べの状況を録音、録画したDVDの鑑定から明らかになりました。

弁護士によりますと、実際には「首を絞めて、もう少しで絞め殺してしまうところだった」と供述しているのに、「死なせようとして首を絞めた」など殺意を認めたように訳された箇所もあったということです。

また、東京地方裁判所で行われた日本赤軍のメンバーによるインドネシアの日本大使館銃撃事件の裁判でも、去年10月、現地の捜査官の法廷での証言などに多くの誤訳があったことが裁判所の鑑定で明らかになりました。

「私服」という捜査官の証言が「警察の服」と訳されたり、「1983年」が「1985年」と訳されたりしていたということです。

通訳の人材確保やレベル向上課題

今後、訪日外国人が増加し、外国人が関係する事件もさらに増えると見込まれる中、捜査や裁判で通訳を務める人材の確保や、レベルの向上が課題となっています。

東京の一般社団法人、日本司法通訳士連合会によりますと、日本には、捜査や裁判で通訳を務める人の国家資格などはなく、各地の裁判所や検察などがそれぞれの判断で通訳に依頼しているため、レベルにはばらつきがあるということです。

捜査や裁判の通訳では語学力だけでなく法律用語の知識も求められるため、この団体では、法律の知識を学んでもらう講座を開いたり、独自の技能検定試験を実施したりしてレベルの底上げに務めているということです。

日本司法通訳士連合会の天海浪漫代表理事は「捜査や裁判で細かいニュアンスまで正確に訳すためには、語学力と法律の知識に加え相手の国の文化を理解する力も求められる。講座や検定試験を通じて通訳のレベルを向上させたい」と話しています。