赤ちゃんを市議会に連れ込むことは、悪いことなのか? 駒崎弘樹
11/24(金) 8:24
https://news.yahoo.co.jp/byline/komazakihiroki/20171124-00078501

【『「訴え方」がおかしい』論のおかしさ】
 
まず、つるの剛士さんの「正義を盾にして正論をふりかざす社会に発展はないし、こういう問題提起の仕方は他の
子育て世帯に可哀想な思いをさせる」という意見について。僕はつるのさんとは対談もしたことがあり、個人的には
本当に大好きなのですが、この意見には賛同できません。

まず、緒方議員は、妊娠中から議会事務局に対して何度も、「議場に子どもを連れて行きたい」「託児はつけられ
ないか」ということを相談していました。しかし、議会事務局からは、「個人的にベビーシッター等をつけてください」という
回答が返ってきていました。つまり、通常のルートで訴えをしていて、それが叶わなかったのです。また、「事務局ではなく、
議会運営委員会という政治家同士でルールを取り決める場所で訴えるのが本筋」という意見もあるでしょうが、彼女は
無所属の1人会派なので、3人以上の会派でなければ議会運営委員会に入れない熊本市議会のルールでは、
政治家同士の話し合いの場にも参加できませんでした。

よって、「訴え方がおかしい」と言われても、「じゃあどうやって訴えるの?」と言わざるを得ません。
この「もっとちゃんとした言い方だったら聞いてやるけど、お前のはそうじゃないからダメだ」という「トーンポリシング」は、
一歩間違えれば、訴える手法のない人たちへの抑圧手法として機能してしまいます。


【「パフォーマンスだから悪い」論の悪さ】
 
八代弁護士はワイドショーで、議場への赤ちゃん同伴については賛意を示しつつも、緒方議員の行動を「パフォーマンスに
見える」と批判しました。パフォーマンスだったとして、何が悪いんでしょうか?社会に課題があった場合、「ここに課題があるんだ」
と広く世の中に知ってもらわなければ、課題の解決には至りません。よく知られる事例としては、青い芝の会の事例があります。

1970年代、今だと信じられませんが、車椅子の障害者は公共バスの乗車拒否にあっていました。そこで、脳性麻痺者の当事者
団体である青い芝の会は、わざと介助者とともにバスに無理やり乗り込んで、同時にメディアも呼んでおくという「川崎バス闘争」
を展開し、差別的な状況について異議申し立てをしたのでした。

結果として、公共交通機関での車椅子利用については各関係機関で検討され、今ではノンステップバスの導入等にも繋がって
いったのでした。こうしたある種のパフォーマンスによって、社会的な注意を引きつけ、事態の改善を誘発する事例はたくさんありますが、
「パフォーマンスは悪い」と言う方は、他に声なき人たちが声をあげる方法を、何かお持ちなのでしょうか。

「パフォーマンスするな」ということは、マイノリティの異議申し立てのツールを奪うことにもなりかねないのです。