長期記憶
必要なたんぱく質分子を特定 愛知の研究チーム
毎日新聞 2017年11月27日 23時27分
https://mainichi.jp/articles/20171128/k00/00m/040/171000c

 自然科学研究機構基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)などの研究チームは、脳内で長期的な記憶を形成するために欠かせないたんぱく質の分子を特定したと発表した。
英オンライン科学誌「eLife」に掲載された。

 椎名伸之准教授(神経細胞生物学)らは、脳内の記憶中枢(大脳・海馬)にある、たんぱく質の分子「RNG105」に着目。遺伝子操作でこれを欠損させたマウスと通常のマウスを計32匹用意。

半分が暗く半分が明るい箱にマウスを入れて暗所で電気ショックを与え、恐怖心を覚えさせた。
間をおいて箱へ戻し、習性で好む暗い所にいる時間を比べた。5分後は、両マウスともほぼ0秒で、数分間の短期記憶があることを確認した。

 ショックを与えた1日後と1週間後は、大差が生じた。
欠損マウスが長くいる傾向で、ショック後の時間がたつと、ショック前の平均に近づいた。暗い所を好む習性を取り戻しており、数時間以上の長期記憶が著しく低下することを確認した。

 長期記憶は、脳内神経細胞(ニューロン)のつなぎ目となるシナプスの強化が必要で、
通常マウスの場合、RNG105を含み情報伝達するRNA(リボ核酸)が、シナプス付近に多く配置されることが電位解析で確認された。
これらから「RNG105が長期記憶の形成に必要な分子」と結論づけた。

 椎名准教授は「(記憶を失う)認知症にとどまらず、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や、自閉症スペクトラムの原因因子を突き止める可能性もあり、臨床・創薬分野に期待できる」と話している。
【亀井和真】