11/30(木) 8:30配信
 ◇自殺の3カ月前に全生徒を対象に実施

 昨年8月に青森県東北町立中1年の男子生徒(当時12歳)がいじめ被害を訴えるメモを残して自殺した問題で、中学校が自殺の3カ月前に全生徒を対象に行ったいじめに関するアンケートの回答を破棄していたことが分かった。文部科学省が2013年に策定した「いじめ防止基本方針」はいじめに関する記録の保存を求めている。学校側は「いじめを訴えた生徒はいなかった」「破棄した時期も分からない」と説明しているが、第三者による真偽の検証は困難となった。

 複数の関係者が毎日新聞の取材に明らかにした。自殺を調査している東北町の再調査委員会も破棄の事実を把握しており、30日に報告書案を両親に開示する一方、学校側の対応に問題があったとする報告書を年内にもまとめる方針だ。

 関係者によると、破棄されたのは文科省の基本方針を受けて学校が16年5月に行ったアンケートで、「4月から今までにいじめられたことはあるか」など選択・記述式の八つの質問で構成されていた。生徒の母親は、生徒が自宅でこのアンケートに記入している姿を見ており、取材に「(生徒が)『悪口、からかい』の欄に印を付けていた」と語った。

 母親は生徒が「死ねばいいんでしょ」と話したことなどから、同年6月中旬、学校に相談。「椅子を蹴られるなどの嫌がらせを受けている」といった被害内容も伝えた。その際、学校側は当時すでに回答を得ていたアンケート結果について説明しなかったという。生徒は2カ月後に自宅敷地内で自殺した。

 文科省の基本方針は「いじめの問題などに関する指導記録の保存」を教委や学校に求めたもので、今回のアンケートもこれに該当。ただ、具体的な保存期間は定めていなかった。一方、東北町教委などによると、学校側も文書の管理方法や期限を決めておらず、町教委も「アンケートは(保存義務がある)公文書に当たらないと判断し、管理を学校に任せていた」としている。中学校の校長は取材に対し「再調査委に経緯を説明した。コメントできない」と話した。

 文科省はいじめ自殺が全国で相次ぐ中、今年3月にガイドラインを定め、いじめに関する文書の保存期間を「少なくとも5年」と明示。アンケートはガイドラインより前だが、保管期間を設けていた自治体もあり、東京都は15年に「アンケートの実施年度末から3年間の保存」を定めていた。

 母親は取材に「(破棄したことを)なぜきちんと言ってくれなかったのか憤りを感じる。隠さないといけないものだったのではないかと疑ってしまう」と話した。【夫彰子、一宮俊介】

 ◇男子生徒の自殺を巡る経緯◇

2016年

 4月    中学に入学

 5月    学校が全生徒にいじめアンケートを実施

 6月13日 いやがらせの実態を親が学校に相談

 8月19日 男子生徒がいじめ被害のメモを残して自殺

 9月 2日 町教委による第三者機関が1回目の会合

12月26日 いじめが一因とする調査結果を答申

  17年

 1月11日 両親が町長に再調査を要請

 3月27日 町いじめ問題再調査委員会が発足。その後

再調査委がいじめアンケートの破棄を把握

11月30日 再調査委の報告書案を遺族に開示予定


https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171130-00000009-mai-life