精神科入院中に身体拘束を受けた人のうち2割以上が、拘束中に医療者による見守りや診察を一度も受けなかったと回答したことが、精神障害のある人たちでつくるNPO「地域精神保健福祉機構」(略称コンボ)が実施したアンケートで分かった。精神保健福祉法の運用基準で、拘束中の見守りや診察は必須と定められているが、順守されていない可能性が浮かび上がった。

 コンボは9月、精神疾患のある人を対象にインターネット調査を実施し、200人が回答。精神科に入院経験がある人は85%で、うち47%が手足や腰をベッドに固定される身体拘束を受けた経験があった。

 身体拘束中の医師や看護師の見守り・診察は、「日に数回」と答えた人が34%いた一方、「解除されるまでまったくなかった」との回答が21%あった。また、拘束中にオムツを着用させられた人は59%に上った。

 厚生労働省によると、精神科で身体拘束を受けている人は2015年6月末時点で1万298人。身体拘束は精神保健福祉法で限定的に認められ、運用基準で拘束中は「原則として常時の観察」と医師による「頻回の診察」が必要とされている。

 今回の調査では、自由記述欄に「拘束するのであれば心のケアを手厚くしてほしい。放ったらかしの拘束ほど悪化するものはない」「必要のない隔離や身体拘束は患者が自ら治そうとする希望を奪う」という声が寄せられた。

 精神科での身体拘束を巡っては7月、日本で措置入院中に死亡したニュージーランド人男性の遺族が、死亡の原因は身体拘束を受けたことだとして、支援者らと「精神科医療の身体拘束を考える会」を設立。今回の調査もこうした動きを受けて実施された。コンボの宇田川健共同代表(46)は「治療上必要ないにもかかわらず、人手が足りない場合にも安易に拘束しているのではないか。病院側の都合による身体拘束はやめるべきだ」と指摘する。一方、国立精神・神経医療研究センターの樋口輝彦名誉理事長は「入院中の行動制限は診療記録を残すことが定められている。行政の医療監査を通じて記録を確認し、適切な対応がされているか客観的に評価することが大切だ」と話す。【塩田彩】

配信12/4(月) 23:05
毎日新聞
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