【ワシントン=河浪武史】米労働省が8日発表した11月の雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数が前月比22万8千人増えた。米連邦準備理事会(FRB)は既に米労働市場は完全雇用に近づいたと判断しており、12〜13日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを検討する。

11月の就業者数の増加幅は市場予測(19万5千人程度)を上回った。失業率は4.1%と前月比横ばいで、FRBが完全雇用とみる水準よりも低い状態を保っている。平均時給は26.55ドルと前年同月比2.5%増えた。米雇用は9月にハリケーンの影響で大きく減速したものの、10月以降は急回復している。

FRBは12〜13日のFOMCで、6月に続く年内3回目の利上げを検討する。米経済は7〜9月期の実質国内総生産(GDP)が前期比年率換算で3.3%増え、3年ぶりの高い伸びとなった。米経済は巡航速度である潜在成長率(1.8%程度)を上回って拡大しており、FRBは雇用増が賃上げ圧力を高めて物価を緩やかに押し上げるとの判断を維持している。

金融市場は次回会合での利上げをほぼ確実視しており、関心は2018年以降の利上げシナリオに移りつつある。次回のFOMCでは、各メンバーが景気見通しと政策金利シナリオを公表する。9月の会合で示した政策予測では中心シナリオが18年も今年と同じ3回の利上げとなった。

利上げ路線の障壁となるのは物価の停滞だ。完全雇用状態にありながら、物価上昇率が目標の2%に近づかず、イエレン議長は「ミステリー」と評した。米経済は景気や市場が過熱する上振れリスクがある一方、物価停滞で企業や個人のインフレ予測が下振れして日本のように低物価が長引くリスクもある。

イエレン議長は18年2月に退任し、パウエル理事が後任に指名された。パウエル氏は現体制の緩やかな利上げ路線を支持してきたが「物価が想定よりも低迷すれば、政策はより緩やかになるだろう」と利上げ減速の可能性も指摘する。イエレン氏も「低物価を放置すれば極めて危険だ」と警戒感を強めており、FRBが次回会合で先行きの利上げシナリオを下方修正する可能性が残る。

配信2017年12月8日 22:40
日本経済新聞
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