http://www.sankei.com/smp/west/news/171215/wst1712150053-s1.html

 夫婦関係が悪化して別居中、過去に作製した凍結受精卵を元妻の女性(46)が無断で移植し妊娠、出産したとして、外国籍の男性(46)が第2子の長女(2)との間に父子関係がないことの確認を求めた訴訟の判決で、奈良家裁(渡辺雅道裁判長)は15日、訴えを却下した。

 妻が結婚中に妊娠した子は夫の子と推定すると定めた民法772条の「嫡出推定」規定を巡り、夫側の同意を得ずに移植した凍結受精卵で生まれた子にこの推定が及ぶかどうかが争点だった。

 判決は、凍結受精卵の移植については両親の同意が必要だとした上で、今回のケースでは元妻が妊娠した当時の交流状況などから、原告男性は民法上、子供の父親と推定される立場にあると判断した。

 2人は妊娠当時、婚姻関係自体は継続。原告男性側は別居して性行為はなく、元妻が凍結受精卵の移植を受ける際に同意の確認も求められなかったとして推定は及ばないと主張していた。

 訴状などによると、2人は平成16年に結婚し、21年から奈良市のクリニックで不妊治療を開始。複数作製した凍結受精卵を使って23年に第1子の長男が生まれた。

 その後に夫婦関係が悪化し、25年10月に別居。女性は26年、男性の同意を得ないまま残る凍結受精卵で妊娠し、27年4月に長女を出産した。2人は昨年10月に離婚した。

 原告の男性は凍結受精卵の移植の際に同意を求められないまま父となったことで精神的な苦痛を受けたとして、クリニックと元妻に対する計2千万円の損害賠償訴訟も奈良地裁に起こしている。