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12月22日 21時20分
「男の子がほしい」「次の赤ちゃんは女の子がいい」
希望どおりの性別の赤ちゃんを妊娠、出産できる「産み分け」。実はこれ、技術的には「着床前スクリーニング」と呼ばれる新たな検査法を使うとできてしまうのです。国内では男女の産み分けのために使うことを学会が禁止していますが、妊娠率を上げるための不妊治療の一環として新たに導入するか検討する臨床研究が本格的に始まろうとしています。「着床前スクリーニング」とはどのようなものなのか。そしてその先にある問題は何か、取材しました。(科学文化部記者 池端玲佳)

試験的にはじまった「着床前スクリーニング」

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36歳の女性のAさん。「着床前スクリーニング」を受けています。子どもが大好きで保育士の仕事をしていたAさんは26歳の時に同僚だった夫と結婚しました。Aさんは月経不順のため結婚直後から不妊治療をはじめました。

「不妊治療をすればきっと子どもは授かるだろう」

当初はそう思っていました。そして、体外受精を行いました。卵子を成熟させるための注射を打ち、その後、専用の器具を使って卵子を取り出します。その卵子を夫の精子と受精させて子宮に戻します。しかし何度も受精卵を戻しましたが、子宮に着床せず妊娠できませんでした。

Aさん夫妻は卵子や精子に異常がないか、さまざまな検査も受けましたが、問題は発見されず、不妊の原因はわかりませんでした。Aさんの体外受精は15回にも及んでいました。不妊治療を続ける精神的な負担のほか、費用も500万円以上になり、貯金を取り崩すなど経済的にも大きな負担になっていました。

そして、ことし、転院した4か所目のクリニックで、医師から「着床前スクリーニング」を受けてみないかと勧められました。受精卵は、染色体に異常があると子宮に着床しにくくなったり、いったん妊娠しても流産したりする確率が高くなることが知られています。このため、医師からは「この最新の検査で受精卵の染色体を調べれば、妊娠する確率が高くなるかもしれない」と言われ、検査を受けることを決めました。

Aさんは通常の体外受精の手順に従ってクリニックで卵子を採取し、夫の精子で受精卵を8つ作りました。ここからが「着床前スクリーニング」の手順になります。受精卵を数日間培養して細胞分裂を始めた頃にそれぞれの受精卵から一部の細胞を取り出します。

そして、取り出した細胞を検査機関に送って、染色体に異常が無いか、「次世代シークエンサー」と呼ばれる機器などで調べます。すると、健康なヒトには2本ずつ23セットの染色体がありますが、2本ではなく3本と数が多かったり1本だけであったりする異常が分析できます。結果は医師に知らされ、それを元に妊娠と出産に至る可能性が高い正常な受精卵を選んで子宮に戻すことになります。

Aさん夫妻は、8つの受精卵から取り出した一部の細胞をすでに検査機関に送っていて、結果が戻ってくるのを待っています。「この検査で子どもができることにつながれば」と話し、希望を持っています。
(リンク先に続きあり)